至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第83回
マダムの誕生日に生まれた一皿

外苑西通りに、ブルゴーニュのレストランを思わせる
木造の建物『アルモニ』。
1階がスタンディング・ワインバーとカフェ、
2階がレストラン、
3階は最も青山の面影を残した
カウンター主体の個室になっていて、完全予約制。

スタンディング・ワインバーは
ディナー前のウエイティングに使ったり、食後に訪れたり
レストランと同じメニューを食べることもできます。
コースは前菜とメインから1品ずつ選んで4500円。
アラカルトもOKです。

私と相棒が訪れたのは
深夜のスタンディング・ワインバー。
カウンターには
仕事を終えた山田実弘シェフの姿もありました。
……まだいいですか?
「どうぞどうぞ」
奥に進むと、(本当に)美しいマダムが
花売り娘のごとく
ワインを6本ほど、かごに入れて持ってきます。
この日は
ほとんどがフランス、1本がスペイン。
グラスワインはボトルの6分の1の価格です。

マダムに指南してもらってワインを決め
最後の一杯(のつもりだった)を飲んでいると
ふと目に留まったメニュー表に
「栗とフォアグラを詰めた
うずらのロースト ポルト酒ソース」
の文字。うーん、気になる。
でも私たちは、もう食事を済ませています。
すると
私の気になる様子が気になったのか
常連さんがひとこと。
「食べた方がいいですよ」
……でもお腹いっぱいなんです。
「いや、それでも食べた方がいい(笑)」
常連さんは
じゃあ自分がおごるから、一皿を3人で分けよう
とまで申し出てくれます。

しかし普段、山田シェフは3階に専念していて
1、2階は別のシェフが担当。
さらにラスト・オーダーをとっくに過ぎた時刻で
コックは下がってしまっています。
それでも山田シェフは
例によってニコニコと厨房へと消え
再び現れたときには
うずらの一皿を持っていました。

これが、絶品。
やわらかいうずらに栗のホクホクした食感、
カリカリのポロネギ、
じゃがいものピューレには黒トリュフの香りが漂って
なんとも香ばしく、おいしい。
訊けばこの一皿、
シェフがマダムの誕生日に作ってあげた料理で
彼女がとても喜んでくれたから
店のお客さんにも、と
メニューに載せて以来、すっかり定番になったのだとか。
どおりで、幸せな味です。

常連さんは満面の笑みで言いました。
「ほら、食べて良かったでしょう?」


■harmonie(アルモニ)
東京都港区西麻布4-2-15 TEL 03-5466-6655


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2004年4月14日(水)

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