| ■QさんからのA(答え) 私の書いた「新説 二宮尊徳」というのはもうずいぶん昔のもので、全集にも入っていますが、質問をいただいて、その本のなかに私が
 「貯金十両 儲け百両 見切り千両 無欲万両」
 というフレーズを入れたことを思い出しました。
 或る時、私が田中角栄さんにその文句を書き込んだら、
 「そうだ、そうだ、この通りだ」といって、何回も頷いていました。
  この中で何が一番難しいかというと、最後の方に行くほど難しくなります。貯蓄をするのはお金を使わなければできることです。
 けど、儲けようということになると倹約しただけではだめで、
 もっとずっと知恵を働かさなければなりません。
 見切るということになるとうんと痛い思いをすることですから、
 それに耐えられるだけの決断と勇気が必要になります。
 それ以上に難しいのが欲を捨てることです。
 儲けようと損しようと、人のためになること、世の中のためになること、
 もしくは自分のためになることであっても
 欲をかかないでちゃんとやれるようになれば、人間として完成に近づきます。
  たとえば株をやるときに自分がそれをいくらで買ったかということをどうしても気にします。
 自分が買った時より安いと、どうしても売る気になりません。
 しかし株をいくらで買ったかに関わりなく
 いま売るか、買うかということになったら、別の考え方をするでしょう。
 とすると過去にやったことにとらわれるのは間違いだということになります。
 だから、もとはいくらであったかにとらわれるのは間違いだということになります。
 過去にとらわれず、思い切って見切ることはとても難しいことですが
 商売をやる人にとっては損を少なくするヒケツなんです。
 先ずお金を貯める初歩からはじまって、
 少しずつ高等技術を身につけるのがいいと思います。
 |