第106回
■OさんからのQ(質問):株の見切りはどうすれば良いか

邱 永漢先生

2年前から先生のことを知り、
今ではすっかりファンというより信者になってしまったものです。
先生の作品で随分古いものになるのですが、
『新説 二宮尊徳』を読ませて頂きました。
その中で特に気に入ったフレーズがあります。

“貯金十両、儲け百両、見切り千両、無欲万両”

確かにその通りだと思います。
今の私は貯金十両のレベルで
先生のように無欲万両のレベルにはなれないまでも、
見切り千両のレベルを目指すつもりで日々勉強しております。

そこで、貯金ばかりしていても次のレベルへは行けないと思い、
中国株を始めました。
ここで、先生に質問があるのですが、
株に対して見切りをなさる時
どういったことに主眼を置かれておいででしょうか?ご教授お願い致します。


■QさんからのA(答え)

私の書いた「新説 二宮尊徳」というのはもうずいぶん昔のもので、
全集にも入っていますが、質問をいただいて、その本のなかに私が
「貯金十両 儲け百両 見切り千両 無欲万両」
というフレーズを入れたことを思い出しました。
或る時、私が田中角栄さんにその文句を書き込んだら、
「そうだ、そうだ、この通りだ」といって、何回も頷いていました。

この中で何が一番難しいかというと、最後の方に行くほど難しくなります。
貯蓄をするのはお金を使わなければできることです。
けど、儲けようということになると倹約しただけではだめで、
もっとずっと知恵を働かさなければなりません。
見切るということになるとうんと痛い思いをすることですから、
それに耐えられるだけの決断と勇気が必要になります。
それ以上に難しいのが欲を捨てることです。
儲けようと損しようと、人のためになること、世の中のためになること、
もしくは自分のためになることであっても
欲をかかないでちゃんとやれるようになれば、人間として完成に近づきます。

たとえば株をやるときに
自分がそれをいくらで買ったかということをどうしても気にします。
自分が買った時より安いと、どうしても売る気になりません。
しかし株をいくらで買ったかに関わりなく
いま売るか、買うかということになったら、別の考え方をするでしょう。
とすると過去にやったことにとらわれるのは間違いだということになります。
だから、もとはいくらであったかにとらわれるのは間違いだということになります。
過去にとらわれず、思い切って見切ることはとても難しいことですが
商売をやる人にとっては損を少なくするヒケツなんです。
先ずお金を貯める初歩からはじまって、
少しずつ高等技術を身につけるのがいいと思います。


←前回記事へ 2002年12月14日(土) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ