死ぬまで現役

老人を”初体験”する為の心構え




第49回
買物の目的意識を持とう

というように、目的意識がはっきりしていると、
どこでどういうものを売っていて、
どこで買えばトクかということにも一応、精通するようになる。
しかし、もちろん、何を買いたいか
あらかじめきめていない場合でも、
旅先で繁華街を歩いておれば、
ショー・ウインドーで欲しい物が目について
予定になかった衝動買いをすることもしばしばある。

つい最近も、私は、台湾の家で
いつも朝食に使ってきたナイフやフォークにあきがきたので、
パリのクリストフの店に入って
スターリングの食器を一セット買おうと考えた。
まったく信じられないような話だが、
純銀のものは注文をしてからでないとつくらないという。

どうせデザインは幾通りかしかないのだし、
買う人は一本か、二本しか買わないわけではないのだから、
同じデザインのものを、少なくとも半ダースとか、
ーダースくらいはつくっておくのが常識だろう。
日本人や中国人なら、絶対にそういうやり方をする。
ところが、ジョージ・ジャンセンで
ナイフやフォークを買った時も品不足がいくつもあって、
足りない分は航空便でのちに送ってもらうよりほかなかった。

ヨーロッパではそれがしきたりになっているとみえて、
世界的に著名な店でも、
みなお金をもらってからはじめてつくりにかかる。
ナイフやフォークのようなすでにあるものを
買い揃えるだけならよいが、
工作機械や自動車を注文してから
半年後、一年後に納品するというのでは、
「定番のものなら明日にも納品します」
というメイド・イン・ジャパンと
太刀打ちできなくなることは目に見えている。
私は欲しい物はその場で買いたがるほうだから、
三カ月後に送りますといわれると、
ゲンナリして、買う気を失ってしまう。

クリストフの店でもそういうことが起こったので
買うのはあきらめて、
この次、香港へ行った時のことにしようと、
空手のまま店を出た。
夏になって東南アジアに行くことになったので、
帰りに香港で買う心積りにしていたが、
バンコクのオリエンタル・ホテルに泊っていた時に、
たまたまタクシーを拾うために通りまで歩いて出た。
オリエンタル・ホテルはタクシーを駐車させないし、
周囲にたむろしているのは雲助タクシーばかりだから、
ふつうのタクシーを拾うためには
二百メートルばかり離れた大通りまで
歩いて出なくてはならないのである。

途中にはおみやげ屋も並んでいるし、
ニセモノの腕時計やニセモノの
ルイ・ヴィトンを売っている露店もある。
何回泊ってもそういう店はやりすごしてきたが、
少し時間のゆとりがあったので、
何気なくショー・ウインドーの中を覗いたら、
銀のナイフとフォークが並んでいて
「ハンド・メイド」と英語で掲示がしてあった。
中へ入って、一つーつ出して見せてもらったところ、
デザインはタイ風だが、細工もよいし、
ジョージ・ジャンセンやクリストに比べても、
さして遜色がない。
値段をきくと、ヨーロッパで買う値段の三分のーである。
内心、「これにきめた」と思ったが、
実はそれからが大へんである。





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2015年3月13日(金)

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