第398回
シェリーの誤解
私のコラムが色々なインターネットコラムや個人ブログで
とりあげられることがあるようです。
しかし、マイナーな個人ブログまで探して、
回答をすることは現実的には不可能なことと、
マイナーな個人ブログが
私のコラムの読者に影響することはほとんどないと思われるので、
コラムで回答することはしないことにしております。
何か、回答を期待する意見があれば、
このコラムのアドレスにメイル送信をしていただければ、
それをオープンにして回答させていただこうと考えているので、
よろしくお願いいたします。
さて、そうはいっても友里さんは同じページのお隣さんなので、
シェリーについて、
読者がさらに誤解を受けそうな記述があったので、補足したい。
友里さんのコラムで、
シェリーが他のマデラやポルトといった酒精強化ワインと違う点は
「ソレラシステム」と言っていて、
これは正しいが、もっと大きな違いは酒精強化のタイミングだ。
ポルト、マデラは発酵中にブランデーを注入するが、
極甘口シェリーを除いて、シェリーは発酵が完了して、
搾ったワインに対してブランデーが加えられる。
このブランデーは「ディスティラード」と呼ばれて、
90度の高いアルコール度数のもの。
さらに、酒精強化では、
このディスティラードをそのままダイレクトに足す場合と、
若いワインで割って足す場合と、
さらに、その両方を共用する場合がある。
ダイレクトに足す場合は、
通常は二番搾りのワインに対して行われ、
フロール(仮性産膜性酵母)が発生せずにオロロソタイプになる。
若いワインで割って足す場合は、
あるコール度数50度くらいにして(ミテアドと呼ばれる)、
通常は一番搾りのワインに対して加え、
フロールが発生してフィノタイプになる。
両方を共用する場合は、ミテアドでフィノを作り、
さらにディスティラードでフロールを消失させて、
アモンティリヤードができる。
このように、フロールの使い方がシェリーの大きな特徴だ。
さらに、ソレラシステムについては、
友里さんだけでなく、ワインの専門家も誤解していることが多い。
ソレラシステムはよくピラミッドで説明されるので、
上から下に段々と古いワインを新しいワインに継ぎ足す
と理解されていることが多い。
そういう蔵も無いことはないらしいが
多くのシェリー醸造所は次のようになっている。
シェリーの貯蔵樽は
熟成途上のものと出荷を控えたものに分かれている。
熟成中の樽群は「クリアデラ」樽群、
出荷を控えた樽群は「ソレラ」樽群と呼ばれる。
ともに三段から五段の山になっている。
クリアデラ樽群はさらに、熟成の古さの順に山に分かれている。
クリアデラで一番若いワインの樽群の
全ての樽からワインを抜いて、それを混ぜて、
1年古い樽群の全てに注ぎ足される。
二番目に若い樽群からまた、ワインが抜かれて、
その1年古い樽群に注ぎ足される。
抜き注ぎだが、昔はサイフォン式の手作業でやっていたが、
今ではポンプを使うところが多い。
このように、新しい樽群の樽からワインを抜いて、
それを混ぜて、新しい樽群に注ぎ足すことが
ソレラシステムと呼ばれていて、酒質の安定化がはかられる。
シェリーは1年の熟成で4%程度が蒸発するので、
若い樽群ほど樽の数は多い。
従って、上下に若い順に並べると逆ピラミッドになってしまって、
積み上げることは難しい。
このように、造りと熟成で
シェリーの蔵(ボデガ)の個性が発揮されて、
それは、ブルゴーニュやボルドーの造り手の違い以上に、
深みの違いとしてバリエーションを楽しめる。
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