“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第397回
日本酒と料理の相性 〜その2

次に提供されたのは、鴨ロースト。
これは「秋鹿」山廃山田錦70%と合わせる。
宗玄と秋鹿の大きな違いは、
宗玄は柔らか味のある奥深さがあり、
秋鹿はきりっとしまった切れ上がりがあるところ。
これは、おおざっぱには、杜氏の能登流と但馬流の違いとも言える。
ともに、よく酸がでているが、
その酸が宗玄は魚に合い、
秋鹿は肉系に合う。
今回は鴨の上品な脂と秋鹿のきりっとした酸が調和して、
さらに一段上の旨みを作り出している。

最初に出た宗玄と鴨を試しに合わせている人もいるが、
秋鹿ほどは合わないことを確認して納得している。
最初は常温でいただき、つぎに燗にしてもらったが、
温めることによって、旨みが引き出されることを実践して
客席からはどよめきが沸いていた。

そして、珍味としてバクライ、塩海胆、鯵のナメロウと
「宗玄」八反錦を合わせる。
宗玄の八反錦は山田錦ほど余韻が長くない。
その代わり、独特の旨みの強さがあり、
そのピンポイントの旨みが珍味系によく合っている。
その後、若竹煮が提供される。
いい出汁で煮た筍がこれまでの魚と鴨の味をリセットしてくれる。

最後の酒肴は卵焼き。
これは、蕎麦屋さんの定番でもある。
卵焼きには諏訪泉1997年醸造古酒を合わせる。
もちろん燗。
卵の風味と、諏訪泉の枯れた旨みが一体となる。
卵のなかに封じ込められている出汁の旨みが、
古酒の焦げたような香りによって引き出されている。
一同ますます、料理と日本酒の相性にはびっくりしている。

最後の食事は鮨の巻物。
鉄火と河童巻き。
小腹がふくれて、
これまで飲んできたお酒の美味しい酔い心地と合わさって、
とても心地よい。
日本酒の講義をして喜ばれ、
そして、自分も美味しい思いができる勉強会。
教える側からも、とてもいいイベントだった。


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2006年3月7日(火)

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