“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第366回
魚と日本酒の相性

銀座「こびき」を再訪した。
最近、行きたいと思う割烹が少ない。
というのは、料理は美味しくても、
いい酒が置いていない店が大半だからだ。
まだ、大半の店は灘や伏見の大手の酒造メーカーの
大量生産の酒を置いている。
地酒が置いてある店でも、
名前だけ有名で旨くない酒がほとんどだ。

という状況のなかで、
「こびき」は築地と全国各地から取り寄せる魚料理が旨いし、
宗玄を中心として、秋鹿、初駒、旭若松、
悦凱陣、るみ子の酒などの、そうそうたる旨酒が愉しめる。
最近では数少ない「行きたい割烹」の一つだ。

前回は二回のテーブル席だったが、
今回は一階のカウンターに通された。
こちらは、ご主人が魚を切って、
お造りを仕上げたり、鮨を握るのを見ながら、
魚と酒を愉しめる。

まずは、宗玄のにごり酒を注文して、
鳴門の村公一さんから送られてきた
鯔(ぼら)の刺身をお願いした。
鯔は水面近くを泳ぐ魚なので、
東京近海のものは水面の汚れを受けて、油臭いものが多い。
こと鯔はそういうことはまったく無く、
とても綺麗で上品な味わい。
宗玄の深みのある旨みに乗って、鯔の味わいも旨みがでてくる。

村さんのところから送られてきている
カラスミの味噌漬けもいただいた。
鯔の産地と同じ徳島の旭若松を燗にしてもらったが、
こちらの地酒は落ち着いた幅のある甘みが
カラスミの味噌漬けの辛味と
不思議な味のハーモニーを醸している。

次に頼んだのが莫久来(ばくらい)、
ウニオヤジ、白子焼き。
莫久来はホヤと海鼠(なまこ)の腸の塩辛であり、
これは香川の地酒である悦凱陣と合わす。
悦凱陣は骨太の旨みがあり、貝類とよく合う。
莫久来の生臭さのなかからも旨みを引き出すのではと考えたら、
案の定だった。
ウニオヤジとは五島列島で作っているウニの塩漬け。
これが味が凝縮されていて旨い。
白子焼きは、もともとの素材のよさがよく分かり、
厚みのある旨みが心地よい。
こちらも、悦凱陣とよく合う。

次にいただいたのが、カサゴの煮付け。
いい具合に煮ている。
こちらは、青森の地酒である初駒無濾過純米生原酒と合わせた。
初駒の乳酸のやさしい酸味が煮付けと実によく合う。

最後に食事を何にしようかと考える。
鮨という選択肢もあったが、
目の前のケースに入っているミル貝を見ていたら、
これを具にした茶漬けが急に食べたくなった。
そこで、お品書きにはなかったところを、
ご主人に無理を言って、ミル貝の茶漬けを作ってもらった。 
これが、とても美味しい。
最後に秋鹿「もへじ」滓がらみの燗をチビチビやりながら、
茶漬けを愉しんだ。
銀座「こびき」は何度でも訪問したい割烹だ。


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2006年1月23日(月)

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