|  第353回銀座「こびき」は魚と地酒の天国
 銀座は気軽に旨い日本酒が飲める店が少ない。特に味のしっかりとした純米無濾過生原酒を置いてある居酒屋は、
 これまでほとんど巡り会わなかった。
 そんな状況のなかで「こびき」は
 旨い魚としっかりとした日本酒を楽しめる店として、
 本当に希少で、貴重な存在だ。
 東銀座の日産本社の脇の通り沿いに「こびき」はある。創業58年の歴史と、
 最近のしっかりとした日本酒との出会いによる革新が
 うまく融合している店である。
 創業時は戦後間もないころで、
 食材も仕入れが大変だった時期であったので、
 カレーとコーヒーを飲ませる店として開店。
 その後、築地も近いのでいい魚を出したいという
 女将さんの強い希望で、鮨と割烹料理を出すようになったという。
 歴史を感じさせる建屋の暖簾をくぐると、1階はカウンターが数席。
 その奥の階段を上ると
 カウンターとテーブル席から構成される落ち着いた空間がある。
 そのテーブル席で地酒と魚料理を堪能した。
 日本酒は宗玄が実に充実している。そのほかには、秋鹿、奥播磨などの
 しっかりとした造りの蔵のものが置いてある。
 もともと、宗玄から直に取り寄せていて、
 宗玄酒造から笹塚の「マルセウ本間商店」を紹介されたという。
 魚は生産地直送のものと、築地から仕入れたものを分けてお品書きに紹介している。
 ここも、鳴門のこだわりの鱸漁師の村公一さんなどから
 魚をとっている。
 今回は村さんの魚は残念ながら入荷していなかった。
 しかし、お品書きに
 青森産マツカワカレイが書かれていることを発見。
 注文をとるときに、魚を数種類おぼんに乗せて説明をしてくれる。
 マツカワカレイは小さめなものを見せてくれて、
 それを煮物にしてくれるが、
 大きいものもあり刺身でも食べられるという。
 マツカワカレイは珍しいので、両方注文した。
 そして、宗玄の濁り酒でまずは乾杯。
 「こびき」の地酒と魚の世界の入り口に入っていった。
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