“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第352回
昨年をふりかえる 〜その2:美味しいイベント

昨年も美味しいものを食べるために、
色々なイベントを企画してきた。
そのなかで特に印象に残るのは、
夏に渓流沿いでキャンプしながら行った宴会だ。

大自然のなかでいい食材を集めて単純な調理をする。
そのできあがった料理を旨い日本酒、ワインと合わせる。
渓流の音がBGMとなり、静かに時間が過ぎていく。
大自然のなかで極上の料理を食べる美味しさ、愉しさは
筆舌につくしがたいものだ。

野外の泊り込み宴会の第2回として、
馬頭の畑で行ったイベントもとても楽しいものだった。
晩秋の時季で外気温が下がり、かなり寒い思いはしたが、
メラメラと燃え上がる焚き火に暖をとりながら、
ノンビリと美味しい料理と美味しい日本酒を堪能していると、
世俗の雑事を忘れさせてくれる。
今年も野外の宴は色々と試みてみたい。
さらに、色々な工夫をして、
もっともっと美味しい食べ方を極めてみたい。

蕎麦栽培は、昨年は自家栽培に加えて、
農家と協力する契約栽培を始めて試みてみた。
畝幅を広く取りすぎて、
間に雑草がはびこり収穫量は少なかったが、
品質の高い蕎麦を得ることができた。
今年は、畝幅を狭くして、
また、土寄せを2回行うなど雑草対策を試みる予定だ。
品種も昨年は栃木の在来種を用いて、
これはこれで味わいが豊かであったが、
再び粒の大きい常陸秋蕎麦に戻すことも検討中だ。

自家栽培の畑は、初春の時季に畑を放っておいたので、
種まき直前に雑草がはびこり、その除去が大変であった。
今年は3月くらいから、ジャガイモなどの栽培をして、
雑草対策を兼ねる予定だ。
蕎麦の契約栽培の農家の方に、
さらに原木による椎茸栽培も今年はお願いする予定。
これは、4月ころに椎茸の種付けを行うことになるが、
作業に立会って、椎茸栽培を1年間体験してみたいと思っている。
手間隙かけて栽培した椎茸は
立派な肉厚の美味しいものになることが期待される。

昨年は、また、江戸前の魚に対する興味から、
東京湾再生を提案するプロジェクトを将来起こしたい
とコラムに書いた。
これがきっかけで、共同通信の記者の方から
水産庁が進める「東京湾再生検討委員会食文化分科会」
という活動があることを紹介していただき、
途中からオブザーバーとして参加することになった。
東京農大の小泉教授が委員長をしていて、
天麩羅『みかわ』の早乙女さん、
大塚『なべ家』の福田さんなど
そうそうたるメンバーが委員となっている。
江戸前の魚の定義、東京湾の魚の美味しさの
訴求方法などについて、真剣な議論が行われていた。

昨年の11月に最後の分科会が行われて、
この委員会は解散となったが、
今年は小泉先生の呼びかけで、
同じメンバーが定期的に東京湾の魚について
議論を重ねていこうということになっている。
私も参加するので、今後の展開がとても楽しみだ。

東京湾だけでなく、
最近の農業、漁業などの
日本の伝統食文化を支える食材の生産現場が
だんだんとおかしいことになりつつある。
これは生産側と消費側、さらに流通や、食品の輸出入、
そして日本の政策などの、
さまざまな社会的な要因が複雑にからんでいるもので、
根本的な解決はなかなか容易ではない。
我々の子孫に海外からも認められている
日本の高い食文化を伝承するためには、
日本国民、そして日本政府に
この危機状況をしっかりと認識してもらうことが必要だ。
今年は、色々なネットワークもできたので、
日本の食文化の継承にささやかな貢献ができれば幸いだ。


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2006年1月3日(火)

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