第16回
「超大現代農業」の怪?
香港に上場している中国企業の「超大現代農業」
(香港市場コード0682)の株価が急落しました。
[その背景]
「超大現代農業」(チャオダモダンアグリカルチャー)は
10月21日に2002年6月通期決算発表を行いました。
前年比売上高58%増、同純利益41%増益という素晴らしい内容でした。
しかし翌22日、香港証券取引所は同社株の売買停止を命じました。
理由は、同社が会計監査会社の同意を得ずに
決算発表を行ったということからです。
その後、立ち会い日数で6日間、商いはストップされました。
再開されたのは10月30日からです。
同社の会計監査会社は
英国のプライスウオーターハウス・クーパーズ(PWC)という監査法人です。
クレディ・リヨネ証券の説明によると、
「超大現代農業」は当初7億元の純益計上を予定していた模様。
しかしPWCは研究開発費、
退職金関連の引当金などを考慮すべきだと注文し、
会社側は6億2200万元に引き下げたそうです。
ただ、変更した純益の承認を得ないまま香港決済取引所に対して
「会計監査の保留意見はない」とする業績報告書を提出したというもの。
トランスリンクの情報によると、
PWCが監査報告書への署名を拒んだ理由を次のように述べています。
PWCは「超大現代農業」に法人税の優遇期間が終了していると指摘し、
将来の税負担に備える準備金を積み増すよう要求した模様。
一方、「超大現代農業」は中国当局との間で、
法人税に対する見解の相違が生じていると発表。
優遇期間の延期を求めるとしている。
大方は上記のような経緯だと思われますが、事実確認は出来ていません。
さて、「超大現代農業」は
10月29日に改めて2002年の通期決算発表を行いました。
その内容は、最初に発表した決算内容と全く同じものでした。
ただ違っていたのは、会計監査会社の承認署名がPWCではなく
独立系の監査会社に変わっていたということです。
[株価急落]
10月30日から再開された同社株の取引は、
大引け値1.600香港ドルで、
出来高は7,300万株(通常の7〜14倍)でした。
売買停止前日の株価は2.100香港ドルでしたので
25%近い急落となりました。
その後31日にはザラ場で1.100香港ドルという安値を付けましたが、
現在(11月5日)は1.210香港ドルです。
[不正会計疑惑に過剰反応か?]
大幅増益企業の株価が急落するという怪に、
市場関係者はとまどいを隠せません。
売買停止の経緯は先に述べましたが、
会社側と監査会社の一種のトラブルであり、
会社の屋台骨を揺るがすような問題とは思えません。
しかし、一見重大問題とは思えないような今回の問題も、
投資家にとっては大きな不安材料となります。
第10回のコラムでご紹介しました、
新義州特別区(北朝鮮)の行政長官に就任予定だった
楊氏が中国当局に逮捕され、楊氏が経営する「欧亜農業」の
不正会計事件が起きたばかりという影響も大きいと思います。
また、売買停止期間に現地一部のマスコミが「超大現代農業」は
有機野菜の証明を取得していない農作物を販売しているなどの
中傷記事を報じたことも影響していると思われます。
「超大現代農業」の経営実態が「欧亜農業」と同類なのか否かは
今後あきらかになってくるでしょう。
引き続き、同社の株価に注目していきたいと思います。
国有企業よりもはるかに経営手腕や成長性が高いと評されて、
もてはやされていたP株(プライベートカンパニー)が、
一転して脆弱な不信企業とみなされ苦境に立っています。
それ以前に、中国企業の会計における不信感が
表面化しただけなのかも知れません。
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