第418回
工業企業:赤字額の急増などが示すものとは?
前回指摘した点を勘案すれば、
中国国家統計局が、
一定規模以上の工業企業
(国有企業と年間売上高が
500万元以上の非国有企業)の
2005年1−8月の業績は、
販売収入の伸びに比して、
利益総額が伸び悩んでおり、
それらにも増して、
赤字額が急速に膨らんでいるといえます。
赤字額の伸び率は1−6月をピークに、
1−7月、1−8月と徐々に下降してきています。
それでも前年同期比50%を超える額が
赤字として積み上げられているので
楽観視はできませんが、
少なくとも最悪の事態は
通り越したといえるかもしれません。
というのも、
赤字額は確かに急増していますが、
別の指標を見てみると、
工業企業の業績は、全体として、
堅調に推移しているといえるものもあるからです。
例えば、負債比率など
7種類の企業業績指標を組み合わせて算出される
工業経済収益総合指数を見てみると、
1−2月は158.72ポイントだったのが、
1−8月には171.16ポイントとなり、
工業企業のその指数は、
05年に入ってから一貫して
右肩上がりを示しています。
工業経済収益総合指数で重視されるのは、
販売収入や利益、あるいはそれらの伸び率、
資産や負債の状況です。
こうした表に見えるデータについて、
伸び率を深く分析しなければ、
1−8月は27.7%増収、20.7%増益であり、
一企業に当てはめれば
優秀な業績ということになります。
赤字額にしても、
一企業として考えれば、
不採算部門の一つや二つあるのは、
むしろ正常ですので、
それを帳消しにしたうえでの
全体としての増益
(しかも20%を超えるほどの)を記録した
総合的な体力の強さを
評価すべきかもしれません。
しかし、04年まで数年、
工業企業の利益総額の伸びは
一貫して販売収入を上回ってきました。
その傾向が、05年になって明らかに逆転、
利益率も縮小傾向にあることは、
上場企業の業績を分析する上でも、
ポイントになってくるかもしれません。
−工業企業の販売収入と利益総額の伸び率、利益率の推移(02年−05年1−8月)− |
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