| 第372回切り上げの中国株への影響:短期的には一過性
 今回の人民元切り上げによる中国株への影響は
 どのようなものが考えられるでしょうか?
 個人的には、一時の好材料にはなっても、
 それがずっと続くものではないと考えています。
 何度も触れてきていますように、
 特に中国本土の株式市場や上場企業は
 構造的な問題を抱えていますし、
 その改革が徐々にですが進んできているとはいえ、
 まだまだ不透明な段階であるのには変わりません。
 そうした中で、
 人民元の切り上げという話題は
 カンフル剤にこそなれ、
 そうした深層の問題の解決には
 直接的にはつながりませんので、
 影響は限定的と見るべきでしょう。
 また、切り上げ率2%ということもあって、経済や企業活動に
 それほど大きな影響を
 与えることはないという見方が、
 おそらく一時期の熱狂が過ぎれば、
 その反動としてより根強くなってくるはずで、
 そうなれば一気に冷却化することも予想されます。
 さらに大きな問題としては、やはり切り上げ率2%というのは、
 ここ1年ほどで
 急速に中国に流れ込んでいる
 世界中の投機資金としては、
 かなり低い水準であり、
 到底納得行くものではないでしょう。
 今後の切り上げ動向とも関わってきますが、
 今回の切り上げを受けて、
 そうした投機資金がとりあえずの利ざやを稼いで、
 中国や香港から一時撤退していく可能性があります。
 ただし、長期的に見れば、今回の人民元切り上げは間違いなく
 中国の経済成長の構造的な問題解決に向けた
 大きな一歩でありますし、
 安定成長をより強い基盤のもとで
 実現していくための施策であって、
 そうした面では高く評価できるものです。
 今後も続けざまに
 切り上げが行われるかどうかはともかく、
 人民元のすべての面に関する改革が
 進展していくことになるでしょうし、
 長期的な安定材料にはなりえます。
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