第373回
輸入危機が切り上げ契機の一つ、企業業績への配慮
国家統計局は7月20日、
2005年上半期(1−6月)の
国民経済に関するデータを発表しました。
同期間中の対外貿易の輸出入総額は
6450億ドルとなり、
前年同期比23.2%増、
前年同期の伸び率と比べて
15.9ポイント低いものとなっています。
このうち、輸出は3423億ドルで、同32.7%増。
この伸び率は
やはり前年同期の伸び率と比べて
3ポイント低くなっています。
輸入は3027億ドル、同14.0%増にとどまり、
前年同期の伸び率と比べて
実に28.6ポイントも低くなっています。
輸出は前年ほどではないにせよ、
堅調に推移していますが、
輸入の方は、伸び率の急落が示すとおり、
若干弱含んでいます。
これは、原油価格の高騰をはじめ、
中国が海外からの調達を必要とする
生産資料の価格上昇が
響いているとも言われています。
このことが、
企業のコスト増につながり、
企業の業績にも影響しつつあるようです。
2005年6月中間期で、大幅減益、
あるいは赤字転換などの警報を発する
中国上場企業が増えています。
全部が全部そうではないでしょうが、
こうしたコスト増も
要因の一つにはなっていると思われます。
今回の人民元切り上げについて、
実はこの企業のコスト増及び
業績悪化に対応するというための
段階的な措置なのではないか、
との見方も根強くあります。
05年1‐6月の輸入の伸びの急落振りを見てみると、
こうした見方も
あながちでたらめとはいえないかもしれません。
世界、特に米国にとっては、
中国の輸出が問題なのですが、
中国自身にとっては、
実は輸入の方が深刻な問題だった、
ということになりかねず、
このギャップは、もしかすると
今後大きなものになってくるかもしれません。
ただし、何度も言いますとおり、
今回の人民元切り上げ率2%という数字は、
実質的な影響はほとんどない範囲であり、
企業救済措置にも実質的にはならないはずです。
ただし、元の切り上げは、
中国の輸出に打撃を与える
という角度もさることながら、
輸入から企業の業績救済措置の側面もある、
というのは、当然のことながら、
中国株相場を見る上では
重要なファクターになりえるものです。
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