第177回
中国の現状からみれば元切り上げは短期的には無理
10月初めに開催された
先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)に
中国が初めて参加した後、韓国などでは
「10月15日前後に小幅な切り上げが
実施されるのではないか」
などと報じられました。
香港メディアでもこれを取り上げて、
人民元切り上げに対する「期待」が
一時ヒートアップしました。
10月12日になって、
国家外貨管理局はこれらの報道について、
「まったく根拠のないものであり、
中国の現行の人民元為替政策に対する誤解だ」
ときっぱりと否定しました。
H株の翌13日の急落は、主に、
この発表を受けてのものと考えられます。
H株投資参加者の元切り上げに対する
「期待」もやはり大きかったようです。
人民元の切り上げが行なわれれば、
輸出成長が減速し、
外資の中国進出や中国展開も阻害されます。
中国の現在の経済や貿易、雇用などといった
各方面の外資の影響は極めて大きく、
例えば、「世界の工場」「世界のマーケット」として、
外資による対中直接投資は、
現在までに年間500億ドル強で推移していますが、
これが中国経済の大きな推進力となっています。
これらが停滞すれば、
外資系やそれに関連する雇用機会が喪失、
ただでさえ高い中国の失業率
(03年末時点、都市部だけで平均4.3%)の
さらなる上昇に拍車をかけることになります。
最悪の場合、社会不安も想定されます。
また、中国は体質的に貿易赤字となるものを
内在している、と指摘されることがあります。
原材料を輸入に頼り、
国内消費を活性化しようと思えば、
そうならざるを得ないというのは筋が通っていますが、
現実としては、年初から2004年前半にかけては、
単月ベースで貿易赤字になりましたが、
04年も通年では50億−100億ドル程度の
貿易黒字を達成しそうです。
輸出産業がまだまだ活発なためです。
ただし、これも元の切り上げが
実現すればどうなるか分からず、
もし極度な貿易赤字のような事態になれば、
国際収支にも直結し、
いわゆるカントリーリスクが中国でも
顕在化しかねません。
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