第145回
「郎監管」の一声で情報開示の姿勢が変わった!
郎咸平氏による
海爾集団(ハイアール)への疑義提出を受けて、
海爾集団は郎氏に水面下で接触、
その疑義に対する反論を行なったとされ、
さらに、それに対する再反論を
郎氏がインターネットなどのメディアを通じて
展開しました。
そのため、郎氏が引用した部分以外、
海爾集団の反論の全貌は不明です。
客観性に欠けますが、郎氏によれば、
海爾集団の反論の中には、
郎氏が最も求めていた持ち株会に関する情報開示について、
説明はほとんどありませんでした。
郎氏によれば、
海爾集団の優良資産を吸収した
持ち株会が大きな利益を上げており、
それが、現在において、ある意味違法的に、
経営陣を中心に潤わせているのではないかと指摘します。
現在、中国では、
国有企業の法人格と経営者の関係について、
依然として、明確な区分ができない状態であるといわれます。
どのような成果を上げても、業容拡大に貢献しても、
国有企業の経営者である限り、
その恩恵を得られない、という構造的な欠陥があり、
それが経営者のモチベーションを下げている
要因にもなっています。
海爾集団では、反論の中で、
「自身は国有企業ではない」ので、
この問題とは無関係としていますが、
郎氏は、
「海爾集団には国有企業的要素が皆無ではなく、
この問題も残っている」
「(海爾集団のトップである)張瑞敏氏は国の幹部」
と再反論、
「(経営者のモチベーションを高めるメカニズムが
皆無であることに対して)非常に大きな同情を寄せ、
その改善を求めるもの」であるが、
「不透明な持ち株会の存在が、
そのために認められるべきではない」としています。
海爾集団に対する指弾は、
中国石油化工(シノペックコーポ、0386)に
対するものと違って、
「親会社による上場企業利用」ではなく、
「不透明な構造が上場企業を通じて
不正の温床になっているのではないか」
というものですが、これらに共通することは、
「市場の中小株主に対する配慮が足らぬ」
と一喝していることでしょう。
TCL集団(000100)に対しては、
その財務状態の不安定さや
検討されている移動体通信機器事業の
スピンオフについて、郎氏がメスを入れ、
これに対して、TCL側は公に反駁したものの、
情報開示について、
今後はより積極的に行なうとの姿勢を示しています。
TCLについては、いずれTCL国際(1070)や
その移動体通信機器事業としての
TCL通訊の分割上場などで
詳しく触れたいと思っています。
ただ、よく言われる通り、
中国企業の情報開示は
まだまだ不徹底な面が残されています。
今回、TCLは郎氏の指摘を受けて、
既存姿勢の改善を進める発言を行っていますが、
それが本当に実現するかどうかはともかく、
そうした姿勢の転換が、
郎氏の言論によって生まれたことは
認めるべきでしょう。
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