第112回
「失踪」は中国の企業家の常套手段?
薬品生産・プロモーション・販売を手がける
遠東生物製薬(0399)が
6月17日の取り引きで、
株価が90%以上暴落するという出来事について、
7月16日現在、まだ完全な解明はなされていません。
同社の筆頭株主でもある蔡崇真・董事局主席が
病気療養のため、入院しており、
正式な記者会見もなかなか開かれず、
その見解を聞き出せなかったためです。
あまりにも長い間、沈黙を保っていたので、
蔡氏が失踪したのではないかとの噂も立ちました。
ただ、その後、蔡氏は報道陣の前に姿を見せ、
簡単な記者会見などを行なっていますので、
この失踪の噂はすぐに立ち消えとなりました。
現在までに、同社の株価暴落は
財務的な問題や機関投資家による
大規模な株式放出などが原因ではないかと
いわれるようになってきました。
それらについては、
もう少し事情が明らかになってから
お話したいと思いますが、
ここで不思議なことといえば、
暴落した企業のトップが入院中で、
姿を見せないだけで、
「すわ、失踪か」という噂が立つことです。
この発想は若干突飛のような印象を受けます。
実は、中国の企業家において、
「失踪」はある意味常套手段でもあります。
最も記憶に残っているのは、
純粋な意味での「失踪」ではないのですが、
欧亜集団の楊斌氏の逮捕劇です。
楊斌氏は、日本でも、
北朝鮮再生の鍵と考えられていた
経済特区としての新義州特区の長官に任命されるなど、
一時期有名になりました。
2002年9月のことです。
しかし、ほとんどその直後、
翌月の10月には、楊斌氏は
欧亜集団の本拠がある遼寧省瀋陽市で
当局に逮捕されました。
北朝鮮との外交問題に発展しかねないだけに
「中朝亀裂」とも騒がれましたが、
容疑は贈収賄、詐欺、農地の不法使用などでした。
|