第98回
引きどころの見極め、華潤集団の分割上場戦略
華潤集団のハイテク部門である
華潤励致(リソーシズロジック、1193)の、
さらに傘下である
半導体ファウンドリー(受託生産会社)の
華潤上華科技有限公司の分割上場が
白紙撤回されたことは、
華潤上華科技自体の株価形成に問題があった、
市場のニーズが華潤上華科技が想定するよりも
低かったことを象徴したものといえます。
中国の半導体産業自身は今後、
黄金期を迎える可能性もあるのです。
華潤集団は、傘下事業の分割上場を通じての
資本市場からの直接的な資金調達を、
さらなる事業拡大のための重要な資金ルートとして
とらえてきていました。
グループの通信事業部門を担う
華潤万衆電話(0331)はやはり、
今年4月1日に分割上場しています。
こうした手法には当然批判がないわけではないですが、
全体的に見て、華潤集団のこうした資金調達の戦略は
成功しているといえます。
「華潤」を社名に冠する
香港上場企業は6社、
中国本土にも数社上場させています。
そうした経験からの判断が、
華潤上華科技の上場先送りに
つながったといえそうです。
確かに現在、
相場環境はここ最近の中で最悪といえます。
経済過熱抑制策が成功するのか失敗するのか不透明で、
米国の利上げについても、
今後どの程度の水準まで引き上げられるのか、
また、中国でも利上げが検討されていますし、
その背景にはインフレ懸念が広がっている、などなど、
悪材料を言い出せば切がありません。
そうした中でも、
例えば、6月11日に上場を果たした
中国最大手乳製品メーカーである蒙牛乳業(2319)は、
上場後も基本的に
好調なパフォーマンスを維持していますが、
基本的にはIPO(新規株式公開)には
不向きな環境となっています。
さらに、華潤集団の分割上場について、
市場の一部に冷めた視線が存在するのも事実、
半導体という有望産業といえども、
時期が悪すぎるといえます。
経験豊富なゆえに、見極めも確かというのが、
華潤集団の強みであります。
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