第41回
株式投資信託と税金
平成15年度税制改正において、
「貯蓄から投資へ」の観点から、
上場株式配当の税金・上場株式売却益の税金が
優遇されることになったことは説明いたしました。
その一環として「公募株式投資信託」の税制も
優遇されるべく改正されました。
ただし、株式投資信託に関する優遇税制のスタート時期は
平成16年1月からです。
1.優遇制度の適用となる「公募株式投資信託」とは
「公募株式投資信託」とは、
一般の個人投資家の方々が運用する投資信託のうち、
公社債投資信託(MMF等)以外のものをいいます。
株式投資信託といっても、
現実の運用はほとんど公社債で運用しており
株式はごく一部しか組み入れられていないものも多く、
また、すべて株式以外(すべて公社債)で
運用されている株式投資信託も珍しくないようです。
このような現状にあるようですが
税制上は株式を運用商品に
組み入れていない投資信託であっても、
目論見書において株式を投資対象にできることを
規定している投資信託は
税金上「株式投資信託」に分類されます。
平成15年度税制改正により優遇税制が適用されるのは、
「株式で運用することができる投資信託」であり、
現時点で株式が投資商品に組み入れられているか否かは
問いません(逆に言いますと、株式を投資商品に
一切組み込めない公社債投資信託やMMF・MRFは
今回の優遇税制の対象外です)。
2.株式投資信託の収益分配金は、
「利子並み課税」から「上場株式配当と同じ税制」に
平成15年末までの株式投資信託の収益分配金の税制は
「利子並み課税」、すなわち銀行預金利息と同じように、
収益分配金から20%の税金(所得税15%・住民税5%)が
源泉徴収されて課税完了とする制度です。
平成15年度税制改正により、今後5年間は
「貯蓄」より「投資」を優遇する税制に変わりました。
そこで、上場株式等の集合体である株式投資信託について
「利子並み課税」のままにしておくと
整合性がとれませんので、
「株式投資信託の収益分配金」は「上場株式の配当」と
まったく同じに取り扱うことになりました。
ただし、上場株式配当の優遇税制
(10%の源泉徴収で課税完了とする制度)が
平成15年4月からスタートしたのに対して、
株式投資信託の収益分配金の優遇税制は
平成16年1月からとなります。
ポイントを記載します
(上場株式配当の税制については第38回を参照下さい)。
(1)平成16年1月〜平成20年3月
株式投資信託の収益分配金が払われる際に
とりあえず前払い税金として源泉徴収される税金は
10%(所得税7%・住民税3%)。
翌年確定申告して総合課税の対象で
累進税率により税額が計算され、
配当控除を適用することも可能ですが
(実は税制上はこれを原則制度として規定している。
尚、この場合の配当控除の控除率は、
株式配当とは異なり複雑になっています)
収益分配金の金額の大小にかかわらず
確定申告しないことも可能
(結果として10%の税金で完了する、
つまり確定申告するしないは任意)という制度です。
(2)平成20年4月以降
収益分配金について源泉徴収される税金が20%
(所得税15%・住民税5%)になりますが、
その他の仕組みは変わりません
(すなわち、確定申告しない場合には
20%の税金で完了させる結果となります)。
3.株式投資信託の解約損・償還損は、
同一年の株式売却益と相殺が可能に
今まで(平成15年末まで)の取り扱いをおさらいします。
株式投資信託を解約した時に生じる損失や
償還時期を迎え償還された時の損失について、
税金上の手当てはありませんでした
(損を他の所得と相殺して、
税金の軽減をはかるような制度はありませんでした)。
個人投資家がリスクをとって
運用した結果の損失であるから、
税金上も何らかの手当てをすべきとの観点から、
改正が行われることになりました。
即ち、平成16年以降に株式投資信託を
解約した場合に生じた解約損や、
償還されたときに生じた償還損については、
同じ年の株式売却益と相殺を認める、という手当てです。
相殺した結果、その年の株式売却利益が減少し
支払う税金が減ることになります。
なお、上場株式等の売却損については
「3年間の損失の繰越控除」の制度がありますが、
株式投資信託の解約損・償還損については
繰越しの制度はありません。
執筆:TFPコンサルティンググループ(株)税理士 布施麻記子
監修:公認会計士 山田淳一郎
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