第26回
フローチャートで早わかり―「特定口座」の組み入れルール
株式の売却損益を計算する為には
「売価」ともともとの「取得価額」の把握が必要です。
この点から「特定口座」に持ち込まれた株式の「取得価額」を
その証券会社が把握し記録しておく必要があるのですが、
持ち込んだ人自身がそれを証明し説明できるケースもあれば、
全く分からないケースもあります。
そこで「特定口座」に持ち込まれた株式
(一般口座からの移管を含む)について、
「取得価額」や「取得日」を決めるルールが
細かく決められています。
非常に細かく、且、分かりにくいので
次にフローチャートを示したうえで少し説明を加えます。
I.現在所有している上場株式等は
「タンス株券」と「一般口座内の株式」
個人投資家の方々が現在所有している上場株式等は、
1.家のタンスや貸し金庫にある株式(タンス株券)
2.証券会社の一般口座にある株式
の2つに分類されます。
II.「タンス株券」の「取得費・取得日」
タンス株券を「特定口座」に組み入れることができるのは
「平成16年12月31日まで」であり、
組み入れの時に確認できた資料の違いにより
次のように三区分して「取得価額」と「取得日」を
決定するルールが決まっています。
特定口座を開設している証券会社自身では
タンス株券の「取得費・取得日」を把握できませんので、
証券会社がこれら事実を確認するための書類を
個人投資家本人が準備する必要があります。
そこで、タンス株券については、
1.証券会社が「取得日」「取得価額」ともに確認した場合
2.証券会社が「取得日」だけを確認した場合
3.それ以外(すなわち、証券会社が「取得日」・
「取得価額」ともに確認しなかった場合
または「取得価額」は確認したが
「取得日」は確認しなかった場合)
の3つに分けて、
「取得価額等」の決め方ルールを異なって決めています。
また、それぞれのケースにおいて適切な確認資料であるとして
課税当局が認めている資料の種類も決められています。
※詳しくは後に掲載される第27回・28回を参照下さい
III..「一般口座」にあった株式は、
2つに分類され取得価額・取得日決定ルールが異なる
「一般口座」にある上場株式等を
「特定口座」に移管(移動)できるのは、
「平成15年12月31日まで」です。
「一般口座」にある株式は、まず、
1.その証券会社で買付け
すぐに保護預り制度を利用し預けてある株式
2.その証券会社に持ち込んだ株式
(例えば、タンス株券をその後保護預りとした、
またはある証券会社から他の証券会社に移動した等)
の2つに大きく区分します。
前者は買付けた証券会社にそのまま預けてあるので
証券会社が取得価額等を把握できるケースが多いわけですが
(この場合でも少し古いと分からないこともある)、
後者は買付けた証券会社に株券を預けているとは限らないため、
現在一般口座を開設している証券会社では
実際の取得価額等を把握できないケースが多いことになります。
そこで、両者を区別して、
各々「取得価額等」の決め方ルールを
制度として決めているのです。
(1)その証券会社で買付け
すぐに保護預り制度を利用し預けている株式
買付けた証券会社に買付け後ずっと預けてある株券といっても、
証券会社に買付け当時の記録
(帳簿等)が残っているとは限りません。
そこで、法律で帳簿保存が義務付けられている
直近10年間に買付けたものと、
それ以前に買付けたものに区分してルールを決めています。
すなわち、
4.買付けた時期が、平成4年12月31日以前の場合
5.買付けた時期が、平成5年1月1日以後の場合
に分けてルール化しています(詳しくは第29回を参照下さい)。
(2)その証券会社に持ち込んだ株式
家のタンスの中にしまってあった株券(いわゆるタンス株券)を
その後証券会社の一般口座に入れて預けた、とか、
別の証券会社から株式を移動した等のケースです。
これらについてはいずれも現在預けている
一般口座の証券会社が
その株式の「取得価額等」を把握しているケースは少ないため、
割切りのルールのもと特定口座に
移動(移管)せざるを得ないことから、
実際の買付け日・買付け価額にかかわらず、
「取得日」は「平成13年9月30日」、
「取得価額」は「平成13年10月1日の終値の80%」とされます。
ではありますが
6.一般口座に持ち込んだ時期が
平成13年9月30日以前の場合は、
上記ルールで対応できますけど、
7.一般口座に持ち込んだ時期が
平成13年10月1日以後の場合には、
平成13年9月30日より後ですので上記ルール
(取得日を平成13年9月30日とするルール)で
特定口座に移管することは整合性がとれないため
一般口座からそのまま特定口座に移管することは
できないルールとなっています
(この場合には一度株券を引き出してから
特定口座に組み入れるといった対応策をとることができます。)
※詳しくは後に掲載される第30回を参照ください。
ただし、上記6のケースについては例外規定があります。
後に掲載される第29回を参照下さい。
執筆:TFPコンサルティンググループ(株)税理士 布施麻記子
監修:公認会計士 山田淳一郎
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