第16回
余分に税金を払わない為の「取得費」の証明、ハウ・ツー
売却した資産の取得価額が不明なケースに対しては、
「売却収入の5%相当額」を取得費として
売却損益を計算し申告してよいという
税金計算ルール(概算取得費)があります。
これは株式だけでなく土地などを売却した時にも
適用されるルールです。
ところがこの「概算取得費」を採用すると
売却代金の95%が売却利益になることから
実態よりも利益が多く計算されてしまい
税金が多額になってしまうケースが発生します。
そこで、売却した株式の「取得費」を証明する書類がない場合は、
概算取得費(売却収入×5%)が
強制適用されてしまうのではないか、
と心配なさる方が多いようです、
が、そんなことはありません。
「取得価額」を証明する売買取引報告書等がない場合
証券会社から送られてくる「取引報告書」や
取引した証券会社の「顧客勘定元帳」など
取得価額を証明する書類がなくても、
次のような方法で取得費を把握して
確定申告していただいて結構です、と
課税当局は言っています
(国税庁ホームページに掲載されています)。
1.本人の手控えで確認できる場合
通帳等を見て、株式購入代金として
口座から引き落とされた金額を把握したり、
日記帳等を見て株式購入金額が特定できたら、
その金額を「取得価額」とする。
日記帳等で「買った日」がわかれば、
その時の株価を「取得価額」とする。
2.手控えもない場合
株主名簿を書き換えている場合には、
株券の裏面や株主名簿によって
株主名簿を書き換えた時期を確認して、
その時期を株式取得の時とみなす。
つまり、株主名簿を書き換えた時の株価をもって
「取得価額」とする。
なお、日記帳等の手控えで取得した
「月」だけしかわからない時には、
当該銘柄のその月の月中平均株価をもって
取得価額とすることも認められます。
つまり、証明する書類がなくても、
個人投資家本人の手控え(日記帳等)によることも認めますし、
取得の時期が把握できればその時の株価をもって
「取得価額」として申告していただいてよろしい、
と課税当局は言っています。
だからといって、日記帳を新たに作成したり、
改ざんしたり、はいけない、これは当たり前ですね。
*上記「取得費の把握」の取り扱いは、
個人投資家が一般口座で上場株式等を売却し、
本人が確定申告をする際の
売却損益の計算に適用できる税の取扱いです。
現在所有している上場株式等について
取得価額を証明する書類がない場合の
その上場株式等に関する「特定口座」における
「取得費」の取扱いは別途ルールが決められていますので
ご注意下さい。
要するに、上記本文で説明しました「取得費」の証明方法は、
個人投資家がご自分で申告する場合の取扱いです。
執筆:TFPコンサルティンググループ(株)税理士 布施麻記子
監修:公認会計士 山田淳一郎
|