プロが教えます!公認会計士
山田淳一郎さんのトクする税金の話

第15回
売却原価つまり「取得費」の計算は
一般的な人の感覚と違うので注意!!

「株式の売却利益と損失を把握するのは手間ではあるが、
そんなに大騒ぎするほどのことではない、
だって、今までも『儲かった、損した』ということは
把握しており一喜一憂(?)していたのだから。」
といった声も聞こえてきますが、
しかし税金計算上の株式売却損益の把握は
チョッと複雑なので勉強して下さい。

株式の売却損益は、
「売却収入−(取得費+譲渡費用)」で求めます。
難しいのは、そのうちの「取得費」です。

ある銘柄を1,000株買っておいて、
後にそれを全部売った場合だと、
「100万円で買った株式1,000株を120万円で売った、
だから売却利益は20万円」という具合に
「取得費」・「売却利益」の把握は簡単です。

ところが、同じ銘柄の株式を次々と買い増しした上で、
その株式の一部を売るケースは
「取得費」の計算が複雑になります。
皆さんのように投資経験の多い方ですと
ドルコスト平均法による株式投資のメリット等を考えて、
買い増ししている方が多いでしょうから、
そのような個人投資家の方々の「取得費」の計算は複雑です。

どう複雑か、と申しますと、
所得税・住民税の世界では
株式売却損益把握のための「取得費」は
あの時のあの株式を今回売った、
という具合に「個別ひも付き」では考えず、
「総平均法に準ずる方法(いわゆる移動平均法)」で把握します
(株式売却が「譲渡所得」に該当する場合。信用取引でない場合)。

例えば、A銘柄の株式を100万円で1株買い、
次に130万円で1株買った後、
そのうちの1株を売却した時の「取得費」は
100万円でも130万円でもなく、その平均値115万円となります。
このように実際の購入価額を基礎に定められたルール
(総平均法に準ずる方法)に従い、
「取得費」を計算しなければなりません。

この取得費ルールは、従来からあったルールですが、
平成14年までは「源泉分離課税」を選択していれば
「取得費」を計算する必要がなかった、
すなわち取得費ルールを知らなくても済んでいたのです。

※実際は、「購入価額」と「購入のための手数料」の
  合計額が取得費となります。

執筆:TFPコンサルティンググループ(株)税理士 布施麻記子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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