まず付加価値税を実施したヨーロッパの国々に共通していることは、もともと間接税中心の税制でやってきた国々であるということである。間接税の目玉は何といっても、関税であり、アダム・スミスの国富論のなかにも、「関税(力スタム)は、内国消費税よりはるか昔からあるものである。これが慣行(力スタム)と呼ばれてきたことからもわかるように、いつのころからかわからないくらい昔から行われてきた慣行的な支払いであるという証拠といってよいだろう」と書いている。つまりずっと昔から関税があって、それがさまざまの商品に広がって物品税が次々と課せられるようになった。戦争その他の理由によって国庫が空っぽになると、そのたびにヨーロッパのどこの国王も、物品税の課税品目を少しずつふやしていった。スミスはこの傾向に対して「下層階級にかかる消費税は、上層階級にかかるものより、はるかに大きな収入をあげることができるが、下層階級の必要な支出にはこれを課すべきでない」と警告している。この手の税金は、どんな場合でも、労働の賃金を引きあげるか、もしくは、労働に対する需要を減らすことになってしまうからである。しかし、どこの国でも背に腹はかえられず、次々と物品税の課税範囲を広げていったので、とうとう税金のかからない部分のほうが少なくなってしまった。そのスキマを一挙に埋めてしまったのが付加価値税であるから、間接税を中心とした税金の歴史を持った国々にとっては、そんなに不自然な制度ではないことがわかる。
第二に、間接税が中心になっている先進国はたいていが税金を払いたがらない国民を擁していることである。ヨーロッパの国々は税金によっていじめ抜かれてきた歴史を持っており、それに対抗する知恵を国民の一人一人が持っている。どれだけ所得があったか自主申告をせよと言われたら、正直に申告する人などそんなに多くない。そういった意味では、間接税中心の国はそんなに自慢できた国ではないのである。フランスなどその最たるもので、日本にくらべると韓国や台湾は、日本の植民地だった時代からずっと間接税が中心になってきた。だからこそ、すんなりと付加価値税に移行することができたのである。

←前ページへ 次ページへ→

目次へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ