そうした格差を心ある人たちは嫌がるだろうが、外国人労働者のほうがそれを承知で喜んでやってくるのだから、それを防ぐことはまずできないし、格差そのものをなくしてしまうことも到底、できないだろう。日本人は自国内で労働資源を夢中になって開発しているうちに限界に達してしまい、ほとんどこれ以上、開発する余地をなくしてしまった。これで完全に壁に頭をぶっつけてしまったとは思えないが、よほど画期的な技術革新でも起らないかぎり、飽和点に達してしまい、あとはもっと低開発国に移動していくよりほかなくなる。
この四半世紀における資本と労働の動きをみるかぎりでは、「資本は労働資源の未開発国に動き、労働力は賃金の高い先進国に動く」という経済原則はまだ完全に機能している。しかし、労働力の移動に対しては、各国の国家的利害関係による制限がきびしいので、労賃の格差を移民によって国際的に均等化することは難しい。やむを得ず資本のほうが労働資源の未開発国に動いて、安い労働力の生産性を一生懸命になって開発する。そうした地域が開発しつくされたころには、おそらく日本の優位は失われてしまっているだろう。しかしそんな先のことまでくよくよ心配していても仕方がない。さしあたり、労働資源にも高品位のものとそうでないものがあるから、まず有望鉱脈から開発を始めることである。そういった角度からみるかぎり、労働資源の未開発国はまだいくらでも世界中にごろごろしていて、開発先に困る心配はさしあたりなさそうである。
|