外国資本が歓迎されるのは、その国の経済活動が盛んになるから
しかし、こうなることが日本人にとって望ましいことでもなければ、日本の政府にとって歓迎すべきことでもない。どちらかといえば、日本政府は日本企業が海外に生産拠点を動かすことによって日本国内が空洞化することには賛成ではなかった。だから資本を海外に移動させることに対しては長いあいだ、大蔵省や日銀の統制下においてきびしいチェックをしてきた。一方で輸出を奨励し、もう一方で農作物など農民の収入に影響する分野では徹底して輸入制限を実施してきたので、輸出が拡大するにつれて、諸外国からその閉鎖性をきびしく批判されるようになった。特に円高が進むと、国内生産を続ければ採算にのらなくなることが目にみえてきたから、たとえそれが国策に反することであろうと、各企業が、それぞれの思惑を秘めて、世界中に生産基地を移す挙に出た。これは決して日本政府の方針ではない。日本の大蔵省も通産省も、自分たちの管轄下から日本企業群がこぞって抜け出していくことを歓迎するわけがない。やむを得ずそうなっていくのを、国内の世論や産業界の圧力を考慮しながら、追認していく形で認めるようになったものであり、それ自身は、貿易の自由化が導き出した時の流れというよりほかないのである。
したがってお金がどちらへ向って流れるかは、一国の政府の力では抑えがきかなくなっている。資本を出したのがどこの国の人であろうと、工場がつくられ、生産から販売、金ぐりから納税まで、それぞれの国でやるのだから、お金を一番たくさんおとすところは当然、拠点となっている国々である。とはいっても、もともとは外国の資本であって、利益を海外に持ち出すか、現地で再投資に使うかは大株主の意思によって決まる。したがってお金がもっと持ち込まれるのか、それとも持ち出されてしまうのかは、それぞれの大株主の都合にもよるが、外国人からみてそれぞれの国の政治情勢や経済状況が投資に向いているかどうかに大きく左右される。とはいえ、外国資本が先進国から発展途上国に至るまで、どこの国でも歓迎されるのは、生産工場がつくられ、経済活動が盛んになれば、どこの国でもそれだけ富がふえるからである。
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