株はまだいいとしても、土地が上がりすぎると、土地を持っている人はホクホクだが、一般庶民がマイホームを建てることもできなくなり、社会問題、政治問題にまで発展する。
ところが、土地が上がったり、株が上がったりすると、固定資産税、登記税、印紙税、取引税をはじめ、譲渡所得税、相続税に至るまで政府の税収もまた上がる。どっちを向いても、政府にとってお金の儲かることばかりだから、抑えるよりは放任しておいて、あとで申し訳的に規制するといった手ぬるい対策に終始してしまうことになる。したがって金本位制から離脱したあとの通貨は、一片の紙切れを政府が保証したというだけの理由でいくらでも発行できるようになった。そのために経済力のない国では、中南米の国々にみられるように通貨の乱発によって、通貨そのものが信用を失い、一年に物価が十倍も二十倍も上がるような慢性インフレ病が蔓延するようになってしまった。
それに対して、日本や、台湾や韓国などのNIESの国々は、貿易収支の大幅黒字が背景になっている。だから通貨としては強い通貨になったが、ドルを裏づけにいくらでも通貨を発行できる立場にあるから、アメリカが赤字になった分だけ通貨の大洪水になる点では、まともにアメリカの悪影響を受ける。アメリカの通貨が収縮してアメリカでデフレになれば、かつての経済学説が考えたようにバランスが回復できるのだが、実際にはアメリカで対外貿易赤字がふえた分だけ、貿易黒字国で自国通貨の発行がふえる仕組みになっているから、アメリカのガンが輸出大国に転移して吹出物になって吹き出してくる。日本人も台湾人も韓国人も、金持ちになったといってホクホクしているが、すでに家や土地を持っている人はいいとしても、まだマイホームを持ってない人は一生かかってもマイホームが持てない、というみじめなことになってしまった。これがドル本位制、紙本位制が富める国に新しくもたらした重大かつ修復のできないひずみである。
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