日本の大企業には中央研究所を持ったところが多く、なかにはハイテク産業のように売上げの一○%を研究費、開発費に注ぎ込んでいる企業も珍しくないが、研究所の中身を覗くと、商品研究、商品開発が主力になっている。「うちの研究所は博士をつくるところではない、商品をつくるためにあるのだ」と本田宗一郎氏は言ったが、日本の国全体が最もお金を注ぎ込んでいるのは、商品であって技術ではない。いわんや原理原則ではない。だからノーべル賞をとるような学者はすべて日本の研究所や大学の研究室からはみ出してしまう。しかし、このことは日本の研究所の特長ではあっても、恥ではない。世の中には学問に貢献するような基礎的研究に貢献する研究所があってもよいが、よく売れる商品を開発する研究機関があっても少しもおかしくはないのである。
さしあたり自分たちの糊口をしのぐ必要のあった日本人に向って、「もっと基礎的で、独創的な研究をせよ」と言っても、言うほうが無理というものであろう。しかし、「売れる商品」を開発することに全力をあげてきたおかげで、経済的に余裕の出てきた日本人が、これからアメリカやヨーロッパに負けないだけの研究費を基礎研究に注ぎ込むことは可能になった。日本人にそういう才能のあることは、何人かのノーべル賞学者を誕生させた実績が示しているとおりである。にもかかわらず、日本人の特長は、やはり「売れる商品」の開発にあり、この傾向は今後も恐らく不変であろう。なぜならば、お金を出すのは民間企業であり、民間企業はもともと見返りのないことにお金を出すほどのんびりできてはいないからである。
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