中国民俗研究家・上田尾一憲が語る、中国民俗の魅力

第84回
勝っても負け?

戦争は国にも民にも大きな影響を与えます。
その為には早急に戦争を終わらす事が大事。
敵国へ遠征に行けば、食料やその輸送費も
バカになりません。その為に孫武は
食料は現地調達にかぎる!と言っています。
人件費、輸送費など色々な事を計算すると
敵地にて食料を1斗調達する事は
味方の食料20斗を運んでくる事に値するのだと
記してあります。
しかし、ここで言う調達とは敵地と言えども
決して略奪のことではありません。
きちんと代価を支払って買い上げることなのです。
これは戦争その時だけの事を考えるのではなく
その後、戦争に勝ちその地の民を治める時に
現地住民の支持を得る事が大切だからです。
その様な事を含めて、
1:20の数字が出てくるのでしょう。

敵軍より手に入れた鹵獲品は、活躍した将に
恩賞としてきちんと分け与え、
敵軍兵士も殺してしまうのではなく、
生かし手厚くもてなして
自軍に編成することが大切なのです。
そうする事によって、戦争をしても
勝てば勝ほど強くなるのです。
ただ勝てばいいと言うものではありません。
1回の戦争に勝っても、総合的に見ると
マイナスになってしまうことがよくあります。

日露戦争でこの「孫子の兵法書」作戦篇の
言葉を忠実に守り、見事な勝利を収めたのが
満州軍総司令部 総司令官の大山巌と
総参謀長の児玉源太郎の2人でしょう。

日本国内が連戦連勝で浮かれていた事を危惧し
大山総司令官は総参謀長の児玉を戦場から離し
押せ押せムードの東京へ帰還させたのです。
日本ではモスクワまでこのまま進軍しろ!と
言う者もいるくらいでしたが、
連戦連勝ではあっても
現状を冷静に判断していた児玉はこれ以上の
進軍を止め、講和を進めることを東京の
有力者に説いたのです。
そして日露戦争開始の翌年にはすでに
講和条約を結び、戦争を終結させたのです。

戦争を長引かせれば、それだけ国は衰え
他国の格好の餌食になってしまうのです。
勝っても勝ちではなくなるのです。


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2006年10月26日(木)

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