第930回
建築物も料理も同じ
以前のコラムで、有名建築家の作品は自身の名声をより高めるため、
居住者にとっては使い勝手の悪い、
奇を衒ったパフォーマンスだけのデザインの
建屋になってしまうものが多いと書きました。
この主張に対するご意見、ご批判をまったくいただいていないので、
この主張は私がわざわざ述べるまでもなく、
広く世に知れ渡った「定説」であると確信した次第です。
料理に関しても私は同じと考えます。
フェラン・アドリア。
世界一有名で予約が取れない店「エルブジ」のシェフであります。
その名声は、はかりしれません。
しかし、最近日本のマスコミへの露出がかなり減りました。
自称料理評論家、フード・レストランジャーナリストたち、
そして味のわからない業界人たちの「エルブジ訪問自慢」も、
目にしなくなりました。
賞味期限が切れたとの大それた発言は、
さすがの友里も言えませんが、
一息ついてしまったのは事実のようです。
本来あるべき食材の食感、調和、味わいよりも、
サプライズを狙った見た目のわかりにくさを目指し、
本来の食感、味わいを無理に加工し、
サプライズの取り合わせなどのパフォーマンスは、
有名建築家が、居心地や機能性よりも外観の奇抜さ、
派手さに重きを置くのと同じと考えます。
個々のシェフなり建築家の創造性を出すことは必要ですが、
食べ手や居住者が中心であるという基本を
忘れてはならないのではないでしょうか。
先日も都庁ビルの雨漏り問題がTVで問題になっておりました。
「有名建築家」として具体名を挙げてない局もありましたが、
あれは丹下健三氏の設計といわれています。
正確には丹下氏の事務所の設計なのでしょうけど。
まだ築10年あまりだというのに、
随所に「雨漏り」がでてしまっているそうです。
その修繕費を見積もったところ、
奇抜なデザインに力を入れたばかりに、
築後のメンテがしにくくなり、かなりの支出になるというのです。
その額が半端ではありません。
記憶では、当初の建設費の2/3にもなるという信じられない数字。
コンペで誰が彼を選定し、そのデザインを許可したのか。
税金で賄っているだけに
責任の所在を明らかにしてもらいたいものです。
丹下氏の建設では、
確か神奈川の某有名ゴルフクラブのクラブハウスも
変な形をしていましたが、雨漏りしたとか言われました。
彼が住んでいたという某マンションの個人所有部分も、
かなり手を入れて改造したようですが、
ちょっとトラぶったとも漏れ聞いております。
料理にしても、建築にしても、
造り側の自己満足や自己顕示欲を満たすのではなく、
使い手側を第一に考えることが最重要だと私は考えます。
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