| 第886回こんな鍋でスッポンの名店といえるのか、大市 1
 昨年、ようやく赤坂のスッポン料亭「さくま」の初訪問が決まりました。
 日本料理では東京、京都を問わず、
 いわゆる「まる鍋」とか
 スッポン出汁のお椀をたまに食する事はありますが、
 スッポン専門店というのはほとんど経験がありませんでした。
 かなり昔、バブルの時期ですね、
 飯倉か東麻布近辺だと記憶していますが、
 割と安いスッポン料理専門店がありました。
 話のタネにフルコースを頼んだのですが、
 生き血は生臭く、
 刺身は卵まででてきて気持ち悪くて食べられません。
 鍋にはエンペラではなく、手足までがそのままの形で入っていて、
 グロテスクで食べられたものではなかった。
 味わいについてはまったく印象に残っていないところから、
 まったく出汁の利いていないものだったと想像します。
 風邪気味でスッポンの滋養で直るからとの知人の誘いでしたが、
 かえって悪化して翌日から寝込んでしまったことは
 鮮明に覚えております。
 それから、スッポン専門料理は敬遠するようになったのですが、
 本当においしいスッポン料理は別物だとの話を再三聞いて、
 仲間に「さくま」へ連れていってくれるように頼んだのでした。
 1週間後の訪問を控えた私はその前に、「さくま」の本家ともいえる
 京都の「大市」に行くことを考えつきました。
 グルメ漫画に取り上げられて、
 知名度を高めてかなりの人気、評判店になったという
 創業300年の老舗。
 海外の客にも喜ばれ、
 レトルト食品をデパ地下などに全国展開するなど
 大掛かりな業務拡大をはかっている
 有名なスッポン料理店であります。
 京都駅からタクシーで1500円ほど、料亭ではなく田舎の民家といえるでしょうか。
 玄関先ではメガネをかけた細身の主人が出迎えてくれました。
 すべて個室対応で、ちゃぶ台に灰皿が完備されています。
 思わずのけぞりました。
 用意されているひざ掛けには、「天下第一美味」との大仰な文字が書かれていますが、
 肝心のスッポンの味はいかがなものなのか。
 レトルトとはいえ、全国展開している店だと知りますと、
 灰皿といい、なにやら嫌な予感がしてきたのです。
 <明日につづく> |