第840回
グルメ・セレブリティーズって何だ? 2
なべ家vs山さき問題
自分が選んだ30人の料理人を「セレブ」と称し、
巻末では「ありがとうございました、今後ともよろしく」
と締めくくっている大谷浩己氏。
こんな姿勢で、ワインや料理店を取材するライターと名乗ることに
恥らいがないのが不思議であります。
全編、料理人のプロフィールなどを美談仕立てにした語り口で
かなり違和感があるのですが、
なかには友里のネタになる話がいくつかありました。
神楽阪の鍋料理屋「山さき」は拙著でも取り上げましたが、
どうやら、修行元の江戸料理屋?「なべ家」の主人と
仲たがいしたようです。
師匠が弟子に、
「今後うちの名前を出してくれるな、と伝えた」とのこと。
何が江戸料理なのか、
ただの寄せ鍋料理ではないかと私は考えますが、
世間では「江戸料理」の店で有名な「なべ家」のブランド、
そしてその弟子と雑誌が紹介してくれたことは
かなりの宣伝効果があったと思います。
そのブランドが使えなくなるのは痛手かもしれませんが、
かなり浸透していますし、なべ家で修行したのは事実ですから、
今の時期なら影響は少ないでしょう。
本人が使わなくても、
こうして私など他人は今でも使っているくらいですから。
円満退社と聞いていましたが、なぜにこじれてしまったのか。
「不義理」と山崎女史は言っていますが、
友里流に推測してみました。
不義理とはなにか。
批判や悪口ではないですから、
売れてきても挨拶などがなかっただけではないか。
しょっちゅう「おかげさまで・・・」
とお礼を言っていなかっただけではないかと。
だいたい大人というか年寄りが、
弟子に店の名を出すな、と通告するのは大人気ない。
事実は変えようがないからです。
拙著でも書きましたが、
ほとんど「なべ家」と変わらないコース、
いやかえって品数が多い料理を師匠の店の半額近くで出している
「山さき」。
逆に言えば、
「なべ家」が高すぎると世間に公表しているようなものです。
弟子が、質が変わらないコースを半額で出して有名になる。
売れれば売れるほど、「なべ家」と比較されることになります。
同じクオリティなら、雰囲気的にもそして料理人の顔が見える
「山さき」を選ぶ客が増えたのではないでしょうか。
弟子が「なべ家」出身と言い続けられると、
本家の営業に差し障る事態に陥っての「絶縁宣言」
と私は推測します。
でも、大谷氏にこう暴露されたら、
ますます「山さき」に注目が集まるのがわかっていない
「なべ家」主人。
度量の小ささだけが露呈されてしまったようです。
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