自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第826回
マスヒロさんへの根本的な疑問 5
丼物、甘物好きで本当にわかるの?

11月7日発売の「週刊現代」で、
マスヒロさんが「至福の食」として絶賛していたのが、
グリル満天星(日本橋三越新館)の
「牛テキ丼満天星風」(1680円)です。
最近はかなり単価の低い料理を立て続けに取り上げていますが、
原稿料は高い料理も安い料理も同じでありますから、
彼はしたたかであります。
投資効果を考えて、B級路線にシフトしてきたのかもしれません。
ま、もともと、この路線が彼の得意なジャンルですから、
背伸びせず初心に帰ったとも言えますが。

さて、久しく満天星へも行っていなかったので、
私はコラムのネタ確保を兼ねて、
昼食に知人を誘ってすぐさま飛び込みました。
予想通り、店先にはこの週刊誌のコラムが飾ってありました。
この「至福の食」が
客寄せの重要な役割を果たしていることがわかります。

4千円弱の和牛の「牛テキ丼」もありましたが、
我々は安いほうの「牛テキ丼」をオーダー。
甘辛のタレをまぶした牛テキが丼のご飯の上に盛られ、
周りは大葉の細切りで埋められております。
本シメジも添えられていました。
スタッフは「割り下」のようなものと言っておりましたが、
このタレ、バターの使いすぎのため、
(無理して洋食風にするためバターを使っているのでしょう)、
味がくどくて大味なもの。
いかにも洋食というか、下町ックな味だと思うのですが、
夕方まで胃にもたれて大変でした。
腹持ちすると言えば聞こえがいいですが、
たんなる胸焼けするだけのドンブリです。
スタッフは、隣の老夫婦にも、
「週刊誌で紹介された料理です」と勧めていましたが、
お年寄りが口にできる味付けと食材だとは思えません。

B級、下町っぽい料理だと割り切れば、それなりのものなのですが、
これが本当に「至福の食、味」だとは到底思えません。
この味が凄いと思い理解できる人が、
繊細な和食の出汁やフレンチのソース、イタリアンなどを食べて
逆に理解できるとは到底思えないのです。
この手のディープな料理が元来本職であるマスヒロさん。
経験を積んで
「広く浅く」色々なジャンルの料理を評価されていますが、
彼のティスティング力の基本が丼物であるということで、
最近「ニンジャ」や「シェ フィガロ」の料理を絶賛するなど
「とんでもないべた褒め」を連発する理由が
ある程度わかった友里でありました。
フレンチもイタリアンも、和食も鮨も、そしてドンブリ物も
すべて専門だと言い張られると思いますが、
グルメ、食通を自負されている方に
この「牛テキ丼」を食べていただいて、
マスヒロさんの味わい評価能力を判断していただきたいと考えます。


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2005年11月25日(金)

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