| 第823回あの店は今・・・ 幸村 2
 インパクトのない殻付きウニのジュレに始まり、鯖鮨や茄子焼浸しに加えて牛の揚げ物が出てきたのには驚きました。
 この「蒸ウニと伊勢海老の煮凝り」は夏の定番だそうですが、
 「落としどころ」がわるいのか、
 味に深みをまったく感じないものでした。
 そのかわり、牛カツのような揚げ物を先付けの意味合いで出して、
 インパクトを与える構成なのでしょう。
 料理のはじめから揚げ物がでるパターンは
 居酒屋でない限りあまり経験がありません。
 季節柄「鱧」主体のコース仕立てでしたが、「お造り」が出ません。反面、焼物が「太刀魚」、「鮎」、「鱧」と3皿もでるなど
 偏りが料理の構成に目立ちます。
 目の前での花板の骨切りが
 京都の名店と比べてあまり手際よく見えなかったのですが、
 実際食したところやはり小骨の処理に不満が残りました。
 鮎も骨抜きは必要ないと言われましたが、
 小ぶりの割に焼き方や質に問題があるのか、
 かなり骨が当たりました。
 カウンターと水周りが近すぎるからか、
 時折水しぶきがカウンター上まで飛んでくるなどの問題も
 あらためて確認しました。
 そして、後半には2度目の揚げ物として「掻揚げ」が供されるなどコース全体のバランスに大いに疑問。
 「造り」の他、「八寸」に値するものも見られませんでしたし、
 京料理の華である「お椀」も普通レベルで、
 一皿とて傑出した料理を見出す事が出来なかったのは残念でした。
 〆のマツタケご飯は、この時期海外産と思われますが、お土産として残りを「お握り」で持ち帰らせてくれるのは、
 以前には無かったパフォーマンスです。
 以前は居なかったのではないか、
 結構若く見えるマダムに階下まで見送ってもらっての
 不満足な2時間、
 本場京都へはこのクオリティ、
 CPでは間違っても凱旋出来ないでしょう。
 <結論>「これがバリバリの京料理」と
 フードライターやジャーナリストに刷り込まれた
 高年齢客や一見セレブ風、業界系の常連客相手に絞った為、
 客からの批評などフィードバックがかからなくなっています。
 京都でも東京でも、よりCPの良い同じような、
 またはそれ以上のレベルの店がかなり出て来ています。
 辛く言わせていただければ、
 「井の中の蛙」の位置づけの店と常連客と言えるでしょう。
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