自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第674回
あの店は今・・・ オストラル 1

交詢ビルに移転する際、強気というか、
かなり思い切った賭けに出てきたようです。
大箱な店が多い5階フロアでも195平米とかなりのもの。
入り口にはウェーティングを兼ねたバーカウンターがありますが、
有効に使われているのか、いや、そんなものが必要なのか。
オープン初日には、
ロングドレスで着飾った満身笑みのマダムが目立っていましたが、
今のところ集客は順調なようです。
しかし、かなりの勘違い経営と思われる営業方針を垣間見て、
私はこの強気がいつまで続けられるか疑問です。

見栄で造ったか、あまり売上に寄与しないであろう
バースペースがかなり大きい。
そしてホールは、8卓と半個室のようなものが2つで
総計40名以上のキャパとなっております。
満席なのですが、高級なフレンチとはちょっとかけ離れた客層。
開店前のミーティングを兼ねているのか、
ママとホステスたちのグループ、
フレンチには似合わない
接待丸見えの男性のみのグループが半個室を占領。
ホールもほとんどが同伴カップルで、
素人といえども会社経費落しが見え見えの、
若い女性を2人つれた初老の男性など、
自分たちのことを棚に上げて言わせていただくと、
一般人が眉をひそめる客が大半でした。
現在はかなりこなれてきて
女性客だけのグループも増えているようですけど。

前日に予約の確認が必ずあり、
しつこく男性はジャケットの着用を確認させられましたが、
初老のつれていた若い女性は
通勤着の定番であるタイトなカーディガン姿。
同伴ホステスなどは
トートバッグ(買い物用)であるバーキンを携えており、
マダムが狙っている高級路線を踏み外した客の趣味に
違和感を覚えました。
例のキャビア(オシェトラ)は、
生牡蠣と一緒にワゴンで各テーブルへプレゼンしていました。
(最初の訪問当時)
また、メニューにも価格を載せるようになっていて
「押し売り」は改善されていましたが、
キャビアや生牡蠣を前菜の前にチョイスさせようとする
この必死の営業努力に脱帽です。
友里が以前のサービスを押し売りと評したからか、
メニューにはキャビアは8グラム1680円と明朗表記。
(現在は10グラム2520円)
小売では25グラムで5千円前後ですから
リーズナブルだと思いますが、
グラム単価を開陳してまでキャビアをなぜ売りたいのか、
売上至上主義のマダムの性格が読み取れます。

驚いたのはグラスシャンパーニュです。
移転後最初の訪問はオープン1ヶ月ほど経った頃でしたが、
いつものように我々がグラスでシャンパーニュを頼んだら、
「オープン記念でクリュッグのグランキュヴェしか用意していない」
ときました。
定価が1万5千円、仕入れでは1万円を軽く割る、
しかしおいしい高額なシャンパーニュですが、
グラスでこれしか用意していないとは
普通の常識では考えられません。
人の良い連れは、オープン記念だからサービスだ、
と勝手に解釈してオーダーしてしまいましたが、
マダムの今までの行状を見ている私は冷静に
「1杯3千円以上は請求してくるぞ」とそっと呟いたのです。
果たして明細書には1杯3500円。
2杯とれば仕入値をカバーできそうな値付けですが、
肝心のシャンパーニュは当日の抜栓ではないようで泡の勢いはなく、
酸がたっておりました。
周りを見ても頼んでいる人を確認できなかった。
ワインも高すぎ。
1万円以下はブルゴーニュ、ボルドーとも数種くらいしかない。
アルザスやロワールものでないと
1万円を切るもの見つけられないのです。
ノンヴィンシャンパーニュが1万円前後、
例のグラスシャンパーニュに使われていた
クリュッグのグランキュヴェが29400円
(現在はなぜか値下げして24150円)とかなりの値付け。
ブルゴーニュの村名ワインは
1万2〜5千円出さなければないのはやりすぎです。
あの高いトトキと同じように、かなり高い値付けで頼みにくい。
昔のオープン当初はこんな営業ではなかったのですが、
店を立ち上げた頃のスタッフが皆辞めてしまいましたから、
マダムが暴走しているのでしょうか。

<明日に続く>


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2005年6月14日(火)

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