自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第622回
書きっぱなしでフォローしないのはいかがなものか

何にでも当てはまると思うのですが、
時間の経過とともに物事は変化していきます。
飲食店もしかり。
オープン当初の方針とは違って、集客に不振が続けば
それなりの手を打ってくるでしょうし、
人気が出たならばまた別の意味で変貌を遂げてくることがあります。
私がいうところのいわゆる
「勘違い、思い上がり経営」になってしまう店・料理人も
多く見られます。

自称料理評論家、フード・レストランジャーナリストたちが
コンサル契約を結んだ店ではなく、
純粋に推奨した店があったとしても、
彼らがその後の店の変貌を
フォローする取材姿勢をみたことがありません。
書きっぱなし、褒めっぱなしで
その後の店を読者にフォローしなくていいのか、
自称している「ジャーナリスト」として
責任はないのかと私は言いたい。

例えば再三このコラムのネタとして登場している銀座の「趙楊」。
犬養裕美子さんは、企画の委員長として、
Hanakoで中華のグランプリを与えて褒め称えておりましたが、
もとより性格に難があると思われる主人が、
交詢ビルに移転して勘違いが増し、
まったく違った価格体系の店にしてしまって不振を囲っている
現状の反省というかフォローをしているところ見かけません。
マスヒロさんも、彼の著書で、
野田岩が冬にもアイルランド産だったか、
外国産の天然鰻を仕入れるといった話から
「天然鰻に拘ったすごい店」として宣伝していましたが、
収獲時期や収獲場所によっては
天然鰻の質がかなり劣る、海外産の鰻は種が違う、
といった常識が読者の方々にひろまっているにもかかわらず、
書き逃げで知らんぷりを決め込んでいるようです。
マスヒロさんが日本の鮨屋の中で頂点に達したと評価する
新橋の「しみづ」。
しかし、ひっきりなしに入る予約や飛び込み客に増長したのか、
1時間半以内で客を回転させる営業方針をとってきました。
「かどわき」と違って、予約時に念を押されるので
「追い出し」ではありませんが、
夕方からの営業で、2回転どころか3回転までさせそうな受注状態。
あの規模の店、スタッフ数で、客を取りすぎて、
満足する江戸前の仕込み、仕事が
クオリティ落とさず続けられるのか、
昔からの常連の方からは仕事が雑になったとの意見も良く聞きます。
いつの間にか2回転制にしてしまった「あら輝」にしてもしかり。
どちらもマスヒロさんが絶賛して人気を煽った店ですが、
その後のフォローをしていると思えません。
コンサル契約をしているので、その後の悪いことは書かないのか、
コンサルを結んでいないので、もう取り上げないのか
定かではありませんが、読者のためにはぜひ、
読者サイドにたった真の評価を聞いてみたいものです。
自身がプロデュースして東京へ誘致した「genten」も、
TVを使って大々的に宣伝したにもかかわらず
評判はよくありません。
その辺の検証を自らすることが
今後の飲食店業界のためにもなるはずですが、
そんな兆候はまったく見られません。

自分の事を引き合いに出すことはあまりしたくありませんが、
私は読者の方からのご意見が
自分の評価とかなり乖離してお叱りをうけた場合や、
時間の経過に伴う店の変化を見るために、
再訪を繰り返しそして評価の見直しをしているつもりです。
主に高評価をした店、逆に辛口に評価した店を、
1年ほどの間隔をあけてから見直しています。
「あの店は今・・・」シリーズなどですが、
当初はよかったが増長してCPを落としている店、
これが結構多いですが、逆にケチョンケチョンに書いた店でも、
割と良くなっている店があるのがあらためてわかります。
もともと厳しい評価でも、
料理自体、料理人のポテンシャルはあるはずと判断した店ですが、
書きっぱなしはしないように心がけているつもりです。

料理人に限らず、
自称料理評論家、フード・レストランジャーナリストたち、
そして私を含めて人間は弱いものです。
調子に乗って勘違いする、増長する、傲岸不遜になる、
必要以上に営利にはしる、といった行動にはしりやすいものです。
常日頃、自問自答し、
また周囲からのチェックを受けることが必要だと私は考えます。


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2005年4月23日(土)

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