自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第594回
焼肉ではなく鰻のタレについて

579回で焼肉のタレを取り上げたのですが、
そのことにはまったく反響がありませんでした。
が、逆に引き合いに出した鰻のタレについては
かなりの数の読者の方からメールをいただきました。
中には鰻の卸や鰻屋の関係者の方など
専門知識豊富なかたからも色々お教えいただきましので、
今回はそれを開陳してみたいと思います。

鰻のタレは単純明快、
醤油と味醂を五分五分で詰めただけだとのこと。
若干砂糖を加える店も多いというのですが、
中身は非常に単純だそうです。
ただそれだけでは店の味にならず、
捌いて白焼きし、蒸した鰻をカメにつけるのがキモでして、
その鰻の脂がタレに溶け込んでマイルドな味になるそうです。

ですから、老舗といえども
昔と今では醤油や味醂の味が異なるので、
昔から同じ味のタレというものが出来るわけがない、
それは間違いで、単なる客寄せの口上だとのことでした。
実際、使った分だけ足していったとしても、
何十年、何百年もたつまでもなく
当時の分子構造をもったタレはとっくになくなってしまっていると
理工学的に証明したサイトまでありました。

老舗というのを有難がるのは洋の東西を問わずどこにでもあります。
創業・・・年というのが一つの宣伝文句になっております。
そこに「先祖伝来のタレ」という宣伝文句を加えて他店と差別化、
権威付けして集客をはかろうとしたのでしょう。
このような口上を考え付いた鰻屋の主人には、
その営業力というか頭脳に頭が下がりますが、
何もしらない一般客に
このような誤った知識を与えてしまって良いものなのでしょうか。

天然鰻をほとんど出していないのに、
店のパンフや暖簾ではいかにも天然鰻に拘っている、
出していると勘違いするような手法をとっている有名店が多いのは
以前から指摘してきました。
鰻店の経営者は、ある面大変したたかな人が多いのでしょう。
料理評論家、フード・レストランジャーナリストたちが
彼らの宣伝文句に踊らされ、
店の宣伝に一役買っているのですからお話になりません。
だから、一般客に本当の知識がいっこうにつかないのでしょう。


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2005年3月26日(土)

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