| 第580回京料理の定義とは?
 
 4〜5年前になるのでしょうか。あの「幸村」が麻布十番にオープンした後、
 フード・レストランジャーナリストたちはこぞって絶賛、
 「新幹線に乗らずに東京で本物の『京料理』が食べられる」
 との推薦文も見られました。
 深くは考えたことがなかったのですが、
 私はこのコラムを始めたころ、読者の方から
 「吉兆の創業者、湯木貞一氏は京都産れではなく、
 本店であった高麗橋店は大阪だ。よって吉兆は京料理ではない」
 といった趣旨のお便りをいただきました。
 確かに、江戸料理と言っているが「なべ家」の寄せ鍋のどこが江戸料理なのか、
 「ほそかわ」のどこが江戸蕎麦か、とほえている友里。
 「青柳」からは
 「徳島出身で主に徳島の食材を使っているから
 『徳島料理』と言っているだけ」
 との言質を引き出したこともあり、色々調べてみたのですが、
 「京料理」のはっきりした定義がわかりません。
 店が京都にあるから京料理。では「幸村」は失格です。「と村」も名乗れないでしょう。
 料理人が京都出身。これでは門戸が狭すぎます。
 地方出身者や大阪、東京産れの人は
 一生「京料理」を名乗れません。
 食材が京都産。丹波のマツタケ、間人港の松葉蟹などはそうでしょうが、
 現在京料理で主に使われている食材は
 純粋に京都産のものは少ないのではないでしょうか。
 有名な若狭のグジは福井、
 鯛やヒラメも府外でしょうし、鱧も京都でとれるのか。
 その名の「京野菜」も
 多くは実は他県で栽培されていると聞いたことがあります。
 松葉蟹も府外のものが大半ではないでしょうか。
 私にははっきりしません。料理人や店が名乗れば
 誰でも「京料理」になるのではないでしょうか。
 「ほそかわ」の江戸蕎麦名乗りと同じなのかもしれません。
 |