| 第534回東京一辛いのではないか、東坡 その1
 
 麻婆豆腐を食べ歩いている時、友人から教えられた、
 原宿セコムビルの明治通り反対側の路地に位置する、
 カウンター8席とテーブル1卓の小さな四川料理店です。
 マダムと料理人の姉弟だけで、
 カウンターなど設えも高級感はありませんが、
 綺麗に掃除はゆきとどいています。
 キャパが少ないからか、常連重視の営業方針。当日に問合せしてくる常連のために、
 席はすべて予約をとっていないようです。
 この手の店では避けられないのがマダムの個性ですが、
 一見にもそれほど厳しいものではありません。
 最初から何皿でもオーダー可、何本でもお酒を飲めますし、
 ウリの麻婆豆腐へのオーダーも拒否しません。
 近辺は私の年頃の人間には理解できない格好をした若者、そして外人が闊歩していますが、
 この店の客層はやや業界人っぽい人、料理人仲間など、
 どちらかというと住宅地の小料理屋の雰囲気です。
 マダムが入店してくる一見客に
 「麺類はない」と念押しする場面にあうこともありますが、
 使い古したメニューのほか、
 壁にはお勧めの料理が紹介されています。
 絶対にはずせないのが、マダムが居ないと出ない(つまり彼女が造っている)水餃子に、
 トマト豆腐、そして死ぬかと思うくらい辛い麻婆豆腐です。
 目の前で、皮に具を包んで茹でる水餃子は、
 何も付けずにそのまま食べるよう指示されます。
 軽い中にも旨みを感じる面白いもの。
 たとえ紹興酒に切り替えていても、
 再びビールを飲みたくなる定番です。
 <明日に続く> |