第478回
いまどき100万円ディナーなんて
ある週刊誌に、
「ホテル西洋 銀座」で催される
一人100万円ディナーについての記事がでていると、
読者の方からお聞きしました。
世界的に有名なワイン評論家である
パーカー氏の「ボルドー第4版」の出版記念ということで、
彼がパリやロンドンで提唱した「快楽主義者の晩餐」を
日本でも開催するようです。
主催はワインスクールの老舗、
アカデミー デュ ヴァン ジャパン。
しかし、税・サ別の100万円。
20名限定ですが
ペアで出席したら250万円が
わずか数時間で吹っ飛んでしまうこの晩餐会に
友里は気絶しそうになりました。
こんなところにまで首を突っ込んでくるのかと感心した、
あのロブション氏が
最高の食材をつかって自ら厨房で指揮をとるという料理と、
驚くべき希少なワインの数々で
100万円を正当化したいようですがその実態はどうでしょうか。
1990、1989、1982年という優良年の
1級クラスのボルドーが各年4本で計12本。
目玉はフィロキセラ前の継ぎ木をしていないブドウを使った、
1864年と1870年のラフィットマグナム瓶と
1953年のマルゴー ダブルマグナム、
そして、1921年のイケムのマグナムということです。
週刊誌ではデュヴァンの取締役という
アーネスト シンガー氏がお墨付きを与えていました。
これらのワインは
総額が数千万円の価値があると言っているのです。
でもちょっと待ってください。
週刊誌ではデュヴァンが主催と書かれておらず、
読者には第三者的な評論に受け取ってしまいますが、
実は身内の発言。
しかも私の記憶が正しければ、
アーネスト氏は大橋巨泉氏の娘婿で、
あるワインインポーターの経営者、
そして、ここが肝心なのですが、
パーカー氏の「ボルドー」という評価本の監修をしていたはずです。
まったくの身内発言で、
しかも個々のワインの価格をあまりに高く言っているのです。
例えば1953年のマルゴー。
ダブルマグナムと4瓶分ですが、130万円とのこと。
しかし私は1本分ですが、
7万円以下であるオークションにでていたのを知っています。
珍しい4本瓶で単純に4倍にはならないですが、
プレミアムがついても50万円以下でしょう。
1921年のイケムが210万円というのも本当かどうか。
同じヴィンテージはわかりませんが、
1928年のイケムは15万円以下でありました。
一般に甘口ワインは、優良年といえども
古酒では有名な辛口ワインより相場が安いですから、
マグマムといえど100万円もいかないと推測します。
その他のワイン、
例えば82、89、90年などのボルドーは、
リリース当初に購入していれば
1本数万円もしないものばかりです。
しかも1本720ミリリットルをたとえ2本用意していたとしても
20人で分けるわけですから、
ワインスクールのテースティング並みでしょう。
味わうというより、飲んでみたという経験だけ。
20種のワインを片っ端からちびちび味見して、
その傍らで料理が本当に楽しめるのでしょうか。
確かにフィロキセラ前のワイン2本は
経験がないので惹かれるのですが、
他のワインはそんなに珍しいものではなく、値付けも高そう。
やはりワインは種類を増やさず、
数人でゆっくりたっぷり楽しまなければ
本当の良さはわからないと考えます。
それにしてもロブションといえば山本益博氏。
もしかしてこの会に参加されるのでしょうか。
でも、フィロキセラ前のワインが古すぎて弱いからといって、
若い他のワインを混ぜ合わせるような
暴挙にでないことを祈ります。
|