第468回
ワインの諸々 その36
無名の安い造り手を発掘するインポーターの努力
ワインがお好きの方は
最近の店のリストを見てどうお考えでしょうか。
リストを用意せず、好みだけ聞いて
お任せで出す店も増えてきましたが、
最近のワインはかなり造り手が知られていないというか、
見た事も聞いた事もないものが目立つように感じます。
自分の勉強が足りない事もあるでしょうが、
いわゆるレアではなくてもビッグネームのものではなく、
新進気鋭と宣伝される造り手が増えているのです。
フランスやイタリアだけではなく、
オーストリアワインもかなり健闘しています。
料理評論家やフード・レストランジャーナリストたちが
次から次へと新しい料理店を「おいしい店」と
下駄を履かせて紹介してくる構図に似ていますが、
これはいわゆるインポーターの努力によるものと考えます。
純粋に素晴らしい埋もれたワインを
消費者に提供しようという考えだけではなく、
そこには料理店と利害が一致する
目論見もあるのではないかと思うところがあります。
「お任せスタイル」に特に言えるのですが、
ワイン価格を店が開示しない場合も多い。
以前にも述べましたが、1万円前後の値付けにさえしてしまえば、
高すぎると文句を言う客は少ないでしょう。
つまり、8千円から1万円が一番の売れ筋にしたいはずなのです。
5千円くらいでは、その利益は少なく、
さりとて1万5千円以上ではなかなか売れません。
つまり先に「売値あり」でして、
その売値に対して店側も
そしてインポーターも
充分利益があがるワインが必要になってきたのです。
既に知られたボルドーやブルゴーニュのワインでは、
この価格帯で提供する事は可能でしょうが、
両社の思惑のような利益はあげられません。
よってかなり小さな造り手など知られていないメーカーを
無理に発掘して、実力以上に「すごい、うまい」と
付加価値をつけてくるのです。
最近の造り手は皆同じような方向性で栽培、醸造していますから、
ワインはみな同じような味わいになっております。
どれが良くてどれがまずいかではなく、
皆、そこそこ「おいしく感じる」もの。
田舎の小さな農家のような造り手では、
経費が違いますから購入値は想像以上に安いものです。
インポーターがかなりの利益を乗せた、
しかしそれでも安い価格で仕入れ、
それをリストどころかほとんど説明しないで
お任せで出してしまう料理店。
無名の造り手を見つけ出す執念には感心しますが、
インポーターと店側の見事に一致した思惑が、
最近のワインお任せスタイルにたどり着いのではないかと考えます。
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