自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第455回
日本橋三越新館の料理店

この11日に大々的にリニューアルして生まれ変わった
日本橋の三越新館へ初日に行ってきました。
勿論、入店しているブランドの調査や
最近はこの手のイヴェントでお約束の福袋の購入の他、
飲食店フロアの取材も兼ねてのことでした。

早く行かないと入れないと家人にせっつかれて30分は前に到着。
入り口の前に出来た行列に並ぶという行為は、
あの全盛期の六本木ヒルズの飲食店探訪以来でしょうか。
別に逃げるわけでもないのにと思いながら、
琴の調べの中、目指すブランドフロアの福袋は、
数万円以上の高額なもの。
確かに中身の総計は安いでしょうが
必要なものなのか、好みのものなのかわからず、
結果はお客にとってお得なのかわかりません。
食べ放題のバイキングで、
テーブルに山ほど料理を詰まれたようなもので、
食べ切れなければ、そしておいしくなければ意味がないからです。

さてそうこうするうち、
飲食店フロアのオープン時刻である11時が近づいてきて
家人を説得、15分前に乗り込んだのですが時は遅かった。
満天星は増殖しすぎて新鮮味がなく
この店だけが入っているフロアはパス。
狙いは玉高にも昨年分店を出した「ASO」だったのですが
なんと初回は満席。
先に駆けつけて予約だけ入れていった
熱心な客が多かったようです。
福袋に気を取られてしまった戦略ミスでした。

では、他の2店はどうかと見に行くと、
「筑紫楼」も「なだ万」も予約状況が悪いらしく、
いずれもウェルカム状態です。
筑紫楼などフライングで11時前なのに、
店内へ誘導して客の確保に懸命でした。
なだ万はまったく客が入りそうな感じではありません。
なぜこのように同じフロアでも集客に違いが出てしまったのか、
答えは簡単、値付けが違うからなのです。

「ASO」は3000円と3800円のコース(やや選択制)なのに対して、
何を血迷ったのか「なだ万」はオープン期間限定と銘打って、
5500円と11000円の二本立て。(ランチですよ)
そんなに高額のコースを設定できるほどの
高級食材の仕入れのルートと技量が「なだ万」にあるのか、
突っ込みたくなりました。
この価格では、いくら三越本店の客と言っても躊躇するでしょう。
なにしろ、多店舗展開してお惣菜が主体といった、
イメージが大衆的な「なだ万」なのですから、
客も馬鹿ではありません。

いくらか入っていた「筑紫楼」は、
ランチコースは5千円前後でありましたが、
この店が勝手に自慢している「ふかひれ姿煮」は、
100グラム当たり6000円と
昨年チェックした他の支店より1000円は値上げしていました。
しかし、この店のルーツ、
恵比寿の小さな家族経営の時代の頃を知っている人は、
この大規模化してしまったチェーン店に
現在でも行っているのでしょうか。
昔は確かに旨いかどうかは別にして安かった。
しかし、恵比寿の駅前に支店を出し、
いつのまにか大規模な店を次々だすようになってから、
営業方針はかわってしまったのです。
とても、元の主人や家族が経営できる規模ではなくなり、
別の経営会社にブランドを売却したのではないか
と思ってしまいます。
今は店が宣伝で煽っていますが、
この「ふかひれ」は決して安いものではありません。
他の高級店と変わらない値段なのです。
そして、店側は醤油ベースを勧めるのですが、
それは上湯ベースで勝負できる技量がないことの証左なのだと
私は考えます。

ということで、後日ASOへ行って確認したのですが、
この手のビル内で、この価格にしては充分な内容のコース。
阿曾氏がつめていたからかもしれませんが、
オープン時期だけではなく、
今後もこのクオリティを持続していただきたいものです。


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2004年10月25日(月)

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