| 第451回友里征耶のタブーに挑戦 その21
 どちらが優れているのか、天然と養殖
 
 以前のコラムで、なぜ魚は天然を有難がり、
 牛は手塩にかけた養殖ものが旨いと言われて高額になるのか、
 との疑問を呈したことがありました。
 反友里なのか、
 先週取り上げさせていただいたグルメサイトの主催者の方は、
 「海と陸との生態系の違いもわかっていない勘違い発言」
 と非難されました。
 私はあくまで、マスコミ(その後ろには業界がある)や料理評論家、フード・レストランジャーナリストたちのような
 生産者側、料理店側に立った説を鵜呑みにしていいのか、
 と問題定義したかったのです。
 海と陸との生態系の違いは知っているつもりです。
 同じ陸でも、牛は運動もあまりさせない養殖、
 そして地鶏は放し飼いを重用し、
 しかし、ジビエとして鴨や鹿は野生がなぜいいのか。
 同じ陸の生態系でありますから、
 本来ならば鴨や鹿、猪も養殖ものが珍重されるはずではないか。
 関西の「はまち」は不自然な脂が多い養殖物として関東ではあまり見かけません。
 しかし、神戸や松坂の不自然に脂ののった牛は
 高い値がついています。
 無理にサシがまわるように育て上げた牛、
 また狭い箱に閉じ込めて、
 無理やり餌を食べさせて肝臓肥大にさせたフォアグラなど、
 不健康に育った食材に高額をはらって食べるかと思えば、
 同じ陸のものでは、なぜ野生であるジビエだけが珍重されるのか、
 不思議なのです。
 鰻にしても、実際は養殖しかほとんど出回っていませんから、ブラインドで天然と食べ比べたら、
 案外養殖に手をあげる人は多いのではないかとも考えます。
 要は何がいいたいか。私は絵画や音楽など芸術部門と同じく、
 その業界の第一人者とかマスコミがうまい、と最初に刷り込んだら、
 一般人はそれを「優秀な画家、演奏家、うまい食材」と
 インプットしてしまうのではないかと考えるのです。
 フォアグラ、白トリュフ、ベカスなど産まれて初めて食べた時、最初からおいしいと感じた人は少ないのではないでしょうか。
 あの脂っぽさ、変な香りは
 周りの人から「珍味だ、高級品だ」と旨く感じないのはおかしい、
 といった圧力の結果、
 おいしく感じるような錯覚に陥るといっては言いすぎでしょうか。
 ああいうものが「おいしいもの」と
 無理に体で覚えていくのではないでしょうか。
 牛は脂がのった柔らかいのがうまいのだ、鶏は噛み応えのあるものが旨い、
 鰻は滅多に出てこないが風味が違う天然が旨い、
 業界やマスコミ、料理評論家などに刷り込まれて
 無意識に納得させられたのではないかと思います。
 牛では柔らかいものを、
 しかし、鶏やジビエではなぜ噛み応えを欲するのか、
 矛盾していると考えるのです。
 天然ではありますが、鮪も冷凍物ではなく近海物が人気です。しかし、夏場にブラインドで、
 近海物の生と冷凍のインド鮪を食べ比べたら、
 何人の人が近海物に手を上げるか、
 マスコミや業界、そして料理評論家、
 フード・レストランジャーナリストたちの刷り込みには
 注意が必要と考えます。
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