| 第268回レ クレアシヨン ド ナリサワ 2
 8千円と1万5千円の両コースで共通しているのは「柚子風味」を使ったものが目立つことです。
 厚岸の牡蠣、魚のちりめんキャベツ包みなどに使われていますが、
 多用するのは如何なものか。
 ダイニングの料理ではないのですから。
 シャンパーニュと柚子のジュレの牡蠣は、
 しかし柚子とシャンパーニュの酸味が際立ち、
 せっかくの牡蠣の風味が薄らいでいます。
 8千円のコースは野菜が主体の前菜で、
 原価をかなり抑えているようです。
 キャベツ包みは酸味のたった
 ブールブランのような何の変哲もないソースに又柚子風味。
 しかしメインの子羊は悪くはありませんでした。
 竹にあるウリのラングスティーヌのビスク仕立て。海老は確かにふっくらとしていて素材が良いようですが、
 コライユの味わいがありません。
 同じくウリのフォアグラとイチゴのコンビネーションはただ、
 フォアグラにイチゴがあるだけのこと。
 取合せの妙を狙ったサプライズ料理なだけです。
 しかし、メインである魚や肉はその価格を考えなければ、
 満足するものでした。
 ワインはロデレールのノンヴィンが9400円とやや高めながら、スティルワインは白、赤ともハーフもいくつか用意されていて、
 4千円から揃えており、料理の値付けとは違った方針のようで、
 掛け率も小売の1.5から2倍と思ったほど高くはありません。
 グラスシャンパーニュも1200円ですからこの点は良心的です。
 ただし、直近の若いヴィンテージものしかなく、
 村名ワインが半分、よくてブルゴーニュは1級畑、
 ボルドーは2級クラスまでとなっております。
 特級畑のブルゴーニュは数種しかありません。
 料理価格から考えるとワインはかなり格落ちです。
 しかし問題はリストよりワインスタッフにあるでしょう。設備や備品、食材などに拘った高額店のはずなのですが、
 この店にはソムリエがいないというのです。
 正確には認定資格者がいないということでしょうか。
 あまり知られていない造り手だったのですが、
 その的確な説明が出来ません。
 白ワインは、ほとんど常温に近い温度で提供してきました。
 店のコンセプトとして、ワインにはまったく拘らない客層を
 ターゲットにしているとしか思えないのです。
 竹と梅のコースを頼んで適度なワインで一人当たり3万円前後。
 価格を無視した料理の絶対値評価としては、
 標準以上と思いますが、その価格とのミスマッチを感じます。
 私の定説、「地方の名店が進出してきても、
 東京ではその地で得られた満足感を提供できない」
 は「メゾン ド サヴォア」に続いて
 「ラ ナプール」でも生きていました。
 <結論>概観、内装、設備、備品で売る
 サプライズ系フレンチと感じました。
 価格を問題にしないシチュエーション、
 つまりゲット用、同伴用、接待用のフレンチと考えます。
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