第222回
ワインの諸々 その10
ワインをウリにしている店の将来は?
料理のことはほとんど触れられず、
出されるワインに釣られて常連客が通い続ける店が
都内にもいくつかあります。
第三次ワインブームの前後、1990年代は
そういう店が大変持て囃されました。
西麻布「T」、渋谷「A」など
純粋なフレンチ、イタリアンといえるかは別にして、
その業界では有名な店があります。
六本木にも
当時ワイン雑誌に頻繁に出ていた主人の店がありますね。
これらの店の共通点は、
ワインはお任せ、一見客は入りにくい、です。
今ほど不景気ではなかった頃でしたから、
珍しいワイン、古いワイン、高額ワインのニーズは
相当なものでした。
店と客の立場は逆転。
ワインショップもそうでしたが、
常連客が店側に歩み寄りご機嫌をとって
飲みたいワインを出してもらうよう努力していたのです。
ですから、一見客でたとえ入店できても
このような店でまっとうなサービスを受ける事は期待できません。
ワインも良いのは出なかったでしょう。
何回も通い続け、お店の売上に貢献しつづけて、
店の信頼を得てはじめてレアなワイン、古酒を飲ませて
(勿論お金を払います)もらえるようになります。
今でも原則的にはこのような店と客の力関係に変化はありません。
でも、着実に違った変化は訪れているようです。
さすがに5年、10年と常連客だけとはいえ、
レア・古いワインを提供し続けたら、
ストックはなくなってきます。
古酒は当たり前ですが、今造ることはできません。
数が限られています。
レア、すなわちカリスマ造り手などのワインですが、
これも本数が少なく
世界的に流通経路がオープンになっているので、
手に入れる手段は増えました。
反面、店側も仕入価格はかなり上がってきています。
つまり、ワインをウリにしている店の
魅力が少なくなってきているのです。
レアワイン、古酒が少なくなってしまって、
そう常連にも頻繁に出せなくなってきた。
新規に購入するレアワインは、流通変化で、
個人の収集家とあまり変わらない価格になってしまった。
その傾向がでてきたからでしょうか、
これら特殊な営業スタイルの店の集客が今、
ピンチになってきているようです。
将来を見据えて、方向転換などの検討が必要なのかもしれません。
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