第215回
ワインの諸々 その9
最近のレストランのワイン戦術
先日、シチリア料理で売っているという
北青山のイタリアン、「トンマズイーノ」へ行ってきました。
料理もシチリアの郷土色のでたものが多いのですが、
店にあるワインもほとんどがシチリアワインでした。
ここまで細分化してしまうと、
客側の知識が追いついていきません。
リストにあるかなりのワインを、
私は飲んだことや見た事がありませんでした。
価格帯は5千から1万円くらいまで。
店のコンセプトに合わせた感もありますが、
最近の不景気で高額のワインが売れないのでしょう。
どちらかというと、まだ発掘されていない地方のワインは
仕入れが安いので、リストアップしていると推測します。
中目黒の「フォリオリーナ デッラ ポルタ フォルトゥーナ」。
ここも5千円のワインデギュスタシオンですが
出てくるのはシチリアワインです。
かなりのイタリアワイン通でも聞いたことのないワイン。
帰宅して調べてもわからないようなワインまでありました。
かなり仕入れが安いが無名なので
仕入値を推定できなくしている高等戦術です。
その他「ローブリュー」もそうですが、
同じフランス物でも、ボルドーやブルゴーニュのように
値上がって価格が落ちないワインではなく、
そしてローヌやラングドックを飛び越え、
一番マイナーではないかと思いますがCPのよい
「南西地方」のワインを5千円前後で出す店も出てきました。
前から述べておりますが、
もう一部のコレクターのセラー以外には、
10年前以上、つまり1980年代以前のワインは
この日本でほとんど見かけなくなってしまいました。
ワインへ10万円を超える支払いでも余裕のある方は、
一部のグランメゾンやマニアック店で今尚飲む事ができますが、
これは例外です。
10年も経っていないような
若いワインが主体になってしまった現在、
飲み頃に達していない
ボルドーやブルゴーニュに高い支払いをするか、
南仏や南西地方の知られていないワインだが
飲み頃がかえって早く来る安いワインを飲むかを
我々が選べるようになってきたということです。
あまりこれらのワインが飲まれすぎますと、
需要と供給の原則からコストアップになるかもしれませんが、
見栄を捨てて無名のワインを飲むほうが飲後感は良いと考えます。
個人の好みもありますが、
ボルドーやブルゴーニュの、特に有名造り手のワインでも
早飲み用に醸造されるようになってきましたが、
それでも若いワインは
その本来のポテンシャルを感じることはできないと考えます。
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