| 第186回高いのに2回転する、銀座「小笹寿し」
 暖簾分けで出店してきてから10年経っていないと思いますが、銀座の名店の一つに数えられるようになった「小笹寿し」。
 有名店なので、
 とりあえず、気軽にランチを試してみようと思ってはいけません。
 ここは、昼夜同じ価格設定です。
 知らずに飛び込むと、恥をかいて店を出ることになります。
 昼は客が少ないと思いますが、夜は流行っているようです。
 予約をする際、店が時刻19時半と指定してきました。
 この不景気に羨ましい、
 2回転営業をこなしていることが推測されます。
 19時半で切り上げる1回転目の客が入るということは、
 同伴カップルとして食事に利用する客が多いのでしょう。
 でも、この店はホステスが同伴で入店した場合のリベート、
 いわゆるキックバックを支払わないという
 噂を聞いたことがあります。
 それでも満席になるということは、
 ここの鮨を純粋に食べたがる同伴客が居るということです。
 気が早い私達が10分前にドアを開けたら、まだ満席です。終わりそうな客が見当たりません。
 どうやら、2回転目の客は、
 予約より遅れていくのがルールのようです。
 10席ほどのカウンター。
 西麻布に昨年弟子を暖簾分けさせたので、
 主人の寺嶋氏だけの店かと思ったのですが、
 もう一人、同じような歳の職人さんがつけ場に居ます。
 運悪く、我々はその2番手になりました。
 どうやら主人の弟さんのようです。
 最近の若い職人の店が評判になっているのを考えると、鮨はとりあえず、仕入れのネタの良し悪しで決まるようです。
 同じ店ならば、主人と2番手で変わりはないかというと、
 私は扱う部位が違うのではないかと心配です。
 常連を担当する主人は、高く請求できる彼らに
 うまい部位を出したくなるはずです。
 鮨屋は一見客には差別的な料理屋とも言えるのです。
 確かに、締めるものは締め、煮るものは煮る、と徹底した江戸前。「次郎」のように、ヒラメなど白身を生で出すことはありません。
 仕事のし過ぎかとの意見もあるようですが、
 オボロや薬味を乗せる握りもあります。
 銀座の高額店価格でありますが、ネタ、仕事などを見ると、満席になるのは仕方がないかと私は考えます。
 比較的静かな店内、威圧感もなく、
 ゆっくり鮨と酒を堪能できる環境で、
 つまみと握りのお任せに日本酒を結構飲んで、一人2万数千円。
 場所柄とこの内容では仕方ないでしょう。
 最近の若い主人の店よりは高いですが、
 その価格差を埋める満足感を持ちました。
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