| 第179回最終的には安くはならない、「あら輝」
 「次郎」や「小笹寿し」といった熟練した職人の店とは別に、「さわ田」や「しみづ」、「海味」のような
 30過ぎの若い職人の店が今流行っています。
 これらの店は、長年の修行で培われる技術云々よりも、
 仕入れ先に拘ったネタや価格設定で勝負してきています。
 この立地の悪い「あら輝」も
 若い主人の比較的新しい人気店であります。
 最寄りの用賀駅からタクシーを使わなくてはならないでしょう。地味な街並みにある、この人気店「あら輝」の入り口は、
 店内から明々と照明が漏れてこないので目立ちません。
 流行っているのでしょう、
 「本日は予約で満席」といった張り紙がでていました。
 カウンターのみ12席の明るい店内。テーブルも置けるのではないかと思えるほど余裕のスペースで、
 カウンターも奥行きがあり整然としていて清潔感もあります。
 色々な評価本で絶賛されていて有名のはずですが、
 スーツ姿の男性は我々だけ。地元の常連が主体のようです。
 主人はこれまた流行のスキンヘッドに近い髪型。
 2番手もつけ場に立っていますが同じ髪型です。
 原則は「お任せ」のみ。客には部位はともかく同じものを出すと主人は言っていましたが、
 隣の常連には我々に出なかった
 鯛のアラ煮のようなものが出ていました。
 ダブルスタンダードでしょう。
 これなら同じと言わない方が潔い。
 アラ煮12名分の鯛を仕入れられる訳がないのですから。
 ツマミも握りもネタの原産地には拘っているようです。「江戸前の鯛」は厚めに包丁を入れたもので、
 鳴門産が唯一のウリである「小山」よりは劣るものの
 なかなか良く、東京湾物を見直しました。
 その他、鮑も「さわ田」には劣るもののまずまず、
 しかしその肝は薄くスライスしすぎて
 トリュフかと見間違え物足りなかった。
 アナゴの肝など数点続いてから、
 赤酢のシャリと小ぶりの握りが始まります。
 〆ものはやや軽め、鮪は赤身、中トロ、大トロ、ヅケとフル出場。
 山本益博氏が指導したと自慢していた「玉子焼き」は3時間かかるということで
 残念ながら日曜しかないとのこと。
 それなら偉そうに度々雑誌などで宣伝するなと
 私は山本氏に言いたい。
 前もって3時間特別に焼かせているのか、
 日曜にしか行かないのか、
 そこに「特別待遇」の匂いを感じました。
 ネタの種類はそう多くないものの、なかなかのレベルのツマミと握りで、
 かなりのお酒を頼んで一人1万3千円前後。
 近所にあれば何度もリピートしたい店ですが、
 タクシーを含めた足代で、
 最終的な総出費は
 都心の高額店とそう変わらなくなるのが残念です。
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