第131回
鮨屋のタブーに挑戦 その3
江戸前とはなんだ?
鮨でいう「江戸前」とは何でしょうか。
私ははっきりわかりません。
1.江戸湾(東京湾)で獲れる食材をつかう
2.生のまま出すのではなく、一仕事して加工して出す
3.握りには煮切りやツメを塗ってあり、
そのまま手で食べられるもの
などがよく言われています。
私は「一仕事」したネタを
使ったものを言うと思っていたのですが、
「次郎」へ行ってわからなくなりました。
誰が言い出したか、「日本一の鮨屋」といった称号が有名ですが、
それは「江戸前鮨」の中で、という条件がついているはずです。
「次郎」を「江戸前」と思っていない人は
おそらく居ないでしょう。
でも、ここは白身
特に「ヒラメ」などは、しめずに生で握ってきます。
その方が良い、と本にもあるのですが、
そうなると一仕事していません。
「大間のマグロ」や「閖上のアカ貝」など
その産地は全国的に広がっているようでして、
「東京湾」のネタと言ったら
「クルマエビ」、「アナゴ」、「アジ」
くらいではないでしょうか。
上記の1や2項にまったく当てはまらないのです。
それでは3項のことかというと、
煮切りやツメを全部の握りに塗っている鮨屋は
過半数もないでしょう。
東京以外の鮨屋でも「江戸前」と書いてある場合もあり、
皆が気安く使っているこの「江戸前」の
真の意味が非常に曖昧なのです。
逆に言うと、「江戸前鮨」とは曖昧なもの、と
考えてしまっていいということでしょうか。
山本益博氏は鮨に限らず、蕎麦、天麩羅、鰻に共通の
「江戸前」の意味は、
「おいしいものを食べるために手間をかけた職人仕事のこと」と
定義しておられます。
「江戸前のうなぎ」とは、
いかに脂を落としてさっぱり食べるか大切だそうです。
確かに、養殖を使った野田岩の鰻は、
脂が落ちているかもしれませんが、蒸しすぎで柔らかすぎます。
「野田岩」、「次郎」、「みかわ」、「竹やぶ」の
4店を取り上げた記事でのコメントですが、
注文して15分くらいで出てくる「鰻」や、
「みかわ」の焦げ目の強いただの天麩羅が
果たして当てはまるのか、私には疑問です。
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