第115回
鮨屋のタブーに挑戦 その2
なぜ緊張感が必要か
雑誌やガイド本、そして書籍などでもよく見かける文言に、
「この鮨屋、主人には独特の緊張感があってすばらしい」
というものがあります。
読み飛ばしてしまう読者もいるかもしれませんが、
私はひっかかってしまうのです。
「なぜ、鮨屋で緊張して客が食べなければいけないのだ」、
「他のレストラン、料理店で緊張させるサービスが
客に受け入れないのに、なぜ鮨屋は特別扱いなのだ」
テーブルやカウンターに肘をつくような、
くだけた食べ方が良いというのではありません。
食べ手である客は、品よく、姿勢もよく振舞うのは当たり前です。
水をうったような静粛とまではいかなくとも、
バカ騒ぎのない、雑音のない、清潔感あふれる店内は必要です。
しかし、そのために主人がぴりぴりして、
客を威圧するような緊張感を漂わすことが必要なのでしょうか。
フレンチやイタリアンで、
「あのシェフは独特の緊張感を客に与える。
プレッシャーをかける」なんて評判がたったら、
客は通わなくなるはずです。
鮨屋の主人だけ、なぜ色々な特権をゆるされるのか、
私は前から不思議でなりません。
客がへりくだって、
「なんとか食べさせてください、いくらでもいいです」
といったスタイルはいつから完成されてしまったのでしょうか。
ネタはその日の収穫量や時期によって仕入れ値がぶれる。
時価なので会計は不明瞭でもかまわない。
なにも一見に来てもらわなくても、常連だけで十分だ。
一見には入りにくい雰囲気にしないと、店の格が落ちてしまう。
などと鮨屋の主人が考えているとしたら、
それは思い上がりではないでしょうか。
客に仕入れのリスクをすべて転嫁する。
その日の客が少ない場合は、
常連も含めて営業補償として、請求金額を割り増しする。
こんな営業方針ならば、
鮨屋の主人にはまったくストレスが溜まらないでしょう。
自分のやりたいように振る舞い、高慢な態度をとる。
金額も不明瞭で高額請求。
そんな鮨屋の傲岸不遜な態度を、黙って許し、見逃す事が
「粋」と勘違いしている常連客がいる限り、
鮨屋の特権は維持され続けます。
自称常連客の目が覚め、
勘違いに早く気がつくことを願うばかりです。
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