第99回
ボツになったある雑誌への取材回答 その1
執筆した詳しい動機 前半
7月下旬、ある雑誌から「グラフ社」を通して取材がありました。
11もの質問が列記されていまして、
中には拙著で掲載した店に問い合わせして、
店側の立場で私の反応を見たいかのような、
読者の方には大変興味を持たれると思われる質問もありました。
この際、私の考えや対応を
店側も含めてわかってもらえる機会になると考え、
真摯に回答したのですが、
結果は雑誌側の意図に沿うものとはならなかったのか、
ボツとなってしまいました。
面白い質問もありましたし、
このまま眠らせておくのはもったいないと考え、
今週は7日にわたって
このQ&Aを掲載させていただくことにしました。
このコラムへの掲載文は、
回答した原稿にいっさい加筆修正をしていない、
オリジナルなボツ原稿そのままです。
●『シェフ、板長を斬る悪口雑言集』
ご執筆の動機について教えてください。
ご著書では、既存のガイドブックや
フードジャーナリストの評論に対する
ご不満を述べていらっしゃいますが、
具体的な点についてもう少し教えてください。
併せて、執筆の動機についても詳しく教えてください。
私はもともと好奇心、ミーハー心が旺盛、
しかも外食好きでしたので、
学生時代から食べ歩きを趣味にしておりました。
一人身の気軽さからか、80年代のバブル期からは
店探訪に明け暮れていました。
その時参考にしたのが、
文藝春秋社の「東京いい店、うまい店」や
山本益博氏などが書いていた「グルマン」などです。
新しく突入する際の店選びとしてのガイドにはなりましたが、
食べこんでいくうちに、それら評価本に書かれていた店評価と
自分の印象にかなりのギャップを感じるようになりました。
よくよく読むと、褒めているばかりで
あまり問題を提起していない。
特に、「東京いい店、うまい店」は価格的にピンきりの店を、
一律に星の5段階評価をしているのに無理を感じました。
一人2万円以上の店と1万円以下の店は
食材も建屋の豪華さも違います。
それを一律に評価するということは、
プロ野球と高校野球といった
選手同士のレベルの違いがあるものを、どちらのほうが面白いか、
といっているようなもので意味がありません。
プロ、高校生のレベルの中で競い合うから
それぞれ違った魅力があるのと同じように、
料理店も、支払い金額の高低で
まったく店のコンセプトは変わりますから、
金額面を一緒くたにして評価できるものではありません。
その考えが、後述するCPの良い、悪い、といった考えに
繋がっていくのですが・・・
また、5つ星評価といえども、最低評価は3つ星で実質3段階。
しかも「味」や「サービス」部門で最低の3つ星の店でも、
コメント文を読むと皆、あたかもおいしそうな料理、
素晴らしいサービスのごとく宣伝めいて書かれています。
評価とコメントがまったく一致していない本です。
折角、覆面取材を謳っているのに、
内容を無難にまとめて緩く表記しているのでは、
その意味がありません。
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