自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第95回
ソムリエの実力・実態 その11
デカンタージュでボトル真逆さま

日本ソムリエ協会が認定している人だけが、
ソムリエというわけではありません。
「ソムリエ」は職務を意味するものですから、
飲食店で主にワインの仕入れや管理、サービスを担当する人は
皆ソムリエということになります。
認定を受けているから安心、認定者でないから駄目、と
単純に割り切れない事は今まで述べてきました。
結構、認定者も粗製濫造されていた時期がありましたから、
一概には言えないのです。

でも、最近はかなりの確率で
彼ら「ソムリエ」業のサービス、技量、知識に
疑問を持つ場面に出くわします。
日本中にワインが根付いたとは思えませんが、
4〜5年前に起きた第3次ワインブームで、
ワイン価格の高騰と古酒の品薄、
といった結果をもたらした事は述べました。
つまり、最近出店してくる飲食店のワインは、
若いヴィンテージの値付けの高いものが主体となっております。
フランスワインもイタリアワインも最近は、
大消費国であるアメリカを意識して、
早飲みタイプの造りになってきています。
果実味と樽を利かした色の濃い、
しかし年月を経なくとも飲めるワインです。
ボルドーの1級物でも90年前後からは
そのように変身してきています。
つまり、今の若いソムリエは、新しいワインが主体であって、
あまり古いワインを扱っていません。
古いワインを扱う時に細心の注意を払う「澱」というものも
意識しないのでしょう。
早飲みですから、デカンタージュもしないで
どんどん客に注いでしまっています。

ですから、たまに若いワインの苦手な客が、
早く開かせる、または樽の香りを少しでも消す為に
デカンタージュを要求したら、戸惑ってしまうのです。
業界系の人気店「アッピア」や
鉄人の「マッサ」などで見た光景ですが、
デカンタへワインのボトルを真逆さまにして
すべて流し込んでいました。
若いといえども、若干の澱はあります。
澱が見事に撹拌されてしまったワインを客は飲んでいました。
客側も、ソムリエに任せるだけでなく、
チェックする知識が必要になってきています。


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