| 第80回ソムリエの実力・実態 その9
 冷やし目のワイン
 ワインにはそれぞれ適正温度があるとされています。赤ワインから白ワイン、シャンパーニュになるにしたがって
 提供温度は下げていきます。
 そして、それらのワインでも、
 熟成感の出ている古酒は温かめに、といった手法が一般的です。
 つまり、シャンパーニュなど10度前後に結構冷やすのが普通ですが、
 何十年も経った古いシャンパーニュの場合は、
 ほとんど13度前後とかあまり冷やさずに
 香りや熟成感を楽しみます。
 赤ワインでも、若い「ボジョレー」などは
 常温より冷やし目で飲みます。
 なぜシャンパーニュの古酒は冷やさないのか。なぜ、ボジョレーは冷やすのか。
 答えは「冷やすと香りや味わいがわかりにくくなり、
 ジュース感覚で何でもおいしく感じてしまう」からなのです。
 古くなって香りや味わいに複雑性がでてきたワインは、その特徴を感じ取る為には冷やしすぎてはいけないのです。
 折角の複雑性がジュース感覚となって感じ取れないのは、
 もったいないことです。
 個人によって嗜好が違うので一概に言えませんが、
 私は若いワイン(10年未満)はあまり得意ではありません。
 複雑性の出ていない若いワインは、
 濃く感じるだけで体にきついと思うのですが、
 冷やすことによって和らげることができます。
 ポテンシャルのない、安いワインも同じ理由で、
 冷やし目で飲むと案外何でもいけるものなのです。
 店でグラスワインを頼んだとき提供温度をどう感じますか。ちょっと冷たいな、と思いませんか。
 グラスワインに使うワインは、
 「ハウスワイン」などと称していますが、
 当然安い、ポテンシャルのないワインです。
 抜栓も当日ではなく前日、前々日で
 へたっているワインかもしれません。
 赤ワインでも、ふつうの常温で出したらうまくない、
 と感じられるこの手のワインを、
 冷やし目でだして味わいをわからなくするのが、
 ソムリエの常套手段なのです。
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